2008/11/29に元の内容を修正しました。修正前の内容は、こちらをご参照ください。
測定について

私はアマチュアであるため、測定に必要な条件を持合せている訳では有りません。従って、かなりの妥協をして性能の傾向を把握するように努めているに過ぎま せん。自分で書いていながらいささか失礼ではありますが、信頼のおけるレベルではありません。

私が測定する目的は、意図した通りの動作をしているかどうかの確認が目的です。特性は、傾向を確認しているのに過ぎません。相対的な数字は出ていますが、 定量的な把握には至っていません。

このページの中でも測定データは、いくつか紹介していますが、それでも理想的に測定されたデータはひとつもありません。少しでも理想に近付けるた め以下のようにしています。

使用した機材については、このページの末をご参照ください。

内容

許容できるであろう点

問題となる点

スイープ信号にこだわる理由

測定機材

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許容できるであろう点

1. アンプ、CDプレーヤには一般市販品を用いる
信号を扱う機材には、性能がメーカー保証されたものを使用するということ です。特に、アンプについては、スピーカのインピーダンス特性による影響が出にくいようにするため、比較的電源のしっかりしたトランジスタアンプを用いて います。
CDプレーヤは、信号に殆ど電力を扱わないため、安物を用いていますが、これは、あまり問題にはならないと思います。

2. マイクロフォンには、測定用の機材を用いる。
マイクロフォンには、アコーの7012型を使用しています。このマイクロ フォンは、20Hz〜20kHzまでは、特性の測定値が付いたものです。以下にこのマイクロフォンの測定データを示します(チャートは、B&Kの ものを使用し、また、7052と記載されていますが、7012の誤りということです。ちょっといい加減なところから購入してしまったような...)。 チャートでは、70Hz〜20kHzまでは、ほぼフラットになっていますが、20Hzでは、およそ5dB低くなっています(カタログのスペックと比較する と、7012/7052のどちらとも違っています。本当に正しいものなのか...)。

ACO7012

上記とは逆に、下記に示すように理想的ではない部分が相当にあります。

問題となる点

1. マイクロフォンの電源に、自作品を用いている。
電源は、単体でも20万円もするのでとても購入する気になれません。従っ て、購入元から貰った図面を元に自作しました。
2. マイクロフォンアンプには、測定用ではないものを用いている。
アンプにはユニエル電子製のEF-408型を用いています。これは、 10Hz〜100kHz±3dBというカタログスペックにはなっていますが、数千円のものです。
3. 処理機材にパソコンのサウンドカードを用いている。
元々は、PCのマザーボードに付属するサウンド機能を使用していまし た。、これが壊れ、次に、ONKYO SE-U33GXという多少高価なサウンドカードに変更ましたが、低音にノイズが現れるようになりました(20〜30Hzのノイズなので通常の使用方法で は気 付くことはありませんが)。現在は、Sound Blaster5.1を使用していますが、以上の3つのボードとも、100Hz以下のレベルが全く違っていました。Sound Blasterを使用すると、低音レベルが最も低く表示されます。これでは、何が正しいのか分かりません。一応、スイープ信号を聴きながら、聞こえ始めた ところ が、最低再生周波数ということに決めています。
3. 音源やアナライザ自体が証明されたものではない。
音源には、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、各種のスイープ信号を用いてみ ましたが、どれも結果が異りました。測定機材と音源はセットのものを使用するのが正しい使用方法です。私が使用したFFT Wave7.2では、1/3オクターブバンドや1/12オクターブバンドでの結果表示はできますが、処理そのものはオクターブバンド解析とは別なアルゴリ ズムを用いているようです。ここで使用した音源は、フリーウェアのWaveGeneを使用して作成した、リニアスィープ信号を、CD-Rに焼いて再生したものです。本来はこのような簡便な方法ではなく、測定用の装置を正しく使用しなければ正しい結果は出 ません。
4. 測定用の部屋ではない。
そもそも部屋自体が無響室ではなく、通常の洋室です。部屋の特性込みの測 定になっています。これが一番の問題のところでしょう。低域には、ところどころ深い落込みが見られます。このようなディップ特性は殆どの場合、部屋の癖です。
5. FFT処理ソフトウェアの仕様が明確ではない。
高価過ぎず、入手可能なもののなかで最も良いと評価したものを使用してい ますが、それでも、不明な部分があります。他のものも試してみましたが、妙に良い特性に表示されてしまうものばかりだったので、やめました。


さて、上記を考慮したところで、他の測定と比較してみるとどうでしょうか。

たとえば、長岡先生の測定では、ピンクノイズを再生し、1/3オクターブバンドでの周波数分析をしているように見えます。ピンクノイズとは、1Hzあたり の成分の強さが周波数に反比例するノイズを示します。従って、周波数が高いほど、広帯域にわたる強さを集積して測定しなければなりません。恐らくそのよう になっているのだと思います。
逆に周波数が高くても低域と同じ帯域幅での強さを評価するのにはピンクノイズは不適切ということになります。

ある雑誌に、長岡先生のネッシーを譲り受けたという人の測定結果が載っていたのを見たことがあります。その中に、ホワイトノイズとピンクノイズとでは結果 が殆ど変わらなかった、と書いてあったのを記憶しています。ホワイトノイズは1Hzあたりの信号の強さが全域にわたって同じなのですから、これは、何か変 なのです。

また、周波数分解能も重要な項目のひとつです。FFTアナライザでは、取込時間を適切にとらなければ、低域の分解能が甘くなります。しかし、取込時間を長 くすると処理量が増えるので、低域の分解能を落とすこともあります。その場合は、低域が大雑把で、結果としてフラットな特性に見えるようになります。雑誌 などには、低域の分解能が明らかに不足しているものを平気で載せる専門家もいるのが実情なのです。

ウェブサイトを見回してみると、妙に周波数特性の良いものが散見されます。そのような特性の良いものを発見した場合は、何が違うのか考えて見るべきです。 アナログの時代には、ペンスピードを速くしたりしていましたが、デジタルの時代では、特性を平均化したりすることもできます。また、周囲のノイズレベルと の差が分からないとノイズが特性に見えてしまうこともあります。特に、ピンクノイズ等のレスポンスを見る場合には、周囲のノイズ(暗騒音または環境騒音) との区別ができなくなってしまうことがあります。一般家庭では、長岡先生と同等の音圧でピンクノイズを発生させることは困難であることが多く、また、環境 騒音レベルが高いことも多いと思います。このような理由で、測定結果を評価する場合には、相当な注意が必要です。

以上から考えると、私の測定結果も含めて、怪しいものが相当に出回っていると考えることができます。測定結果というのは、殆どの場合、参考値に過ぎないと 考えるべきでしょう。どうしても特性で選ぶのであれば、高度な測定室を持ったプロの現場まで持ち込んで測定してもらうべきでしょう。その場合には、数十万 円以上コストがかかるものと思います。

エンジニアリングの観点からすると、最も重要なのは、設計通りに動作したかどうかであって、その結果、音が良かったとか悪かったとかいうことは、別な問題 として分けて考えるべきだと思います。私の場合、音の良し悪しは別として、設計通りに動作すれば成功、設計と異る動作をすれば勉強だった、という評価をし ています。

スピーカを自作する場合には、この程度に考えておかなけれ ば、全て失敗ということになりかねません。良い音を目指す、という場合は、作例を自分で聞いて、 全く同じく製作するほうが良いものと思います。最も近道なのは、特性の公開されている長岡先生の作品と同じものを、良い素材、良い仕上で作成することで しょう。


スイープ信号にこだわる理由

長岡先生が、ピンクノイズを使用してスペクトル解析を実施しておられたので、アマチュアの測定では、この方法が多いようです。これに対して、メーカーで は、スイープ信号を使用して測定していることが多いようです。

私は、後者のスイープ信号を使用する方法にこだわっています。理由は、メーカーがそうしているからということではありません。理由は下記の通りです。

  1. 音を聴きながらグラフをみるときに、スイープ信号では目と耳で確認できるので都合が良い。これに対してピンクノイズを使用する と、その音がスピーカから出ているのか、外部の騒音なのか区別がつかないし、そもそも、ピンクノイズを聞いても耳では特性が分からない。
  2. ピンクノイズやホワイトノイズを音量を上げて聞くと不快である。
  3. ピンクノイズやホワイトノイズでは、高調波歪が分からないが、スイープ信号では、現在出ている周波数以外の高調波のレベルが分か るので、問題があったときに原因を特定しやすい。敢えて云えば、スイープ信号を使用すれば、音の良し悪しをある程度評価しやすいということになる。
  4. インピーダンスの傾向を見るときに、スイープ信号を使用した解析では、共振周波数などを細かく見ることができる。ピンクノイズの スペクトル解析では、インピーダンスの傾向が大雑把にしか把握できない。これは、自分の狙った結果が出ているかどうかを評価するためには致命的である。
勿論、ピンクノイズを使用したスペクトル解析には、メリットもある訳であるし、長岡先生がそのようにされたのは正しいことだと思います。しかし、自分はエ ンジニアであり、自分の設計の結果を確認するには、スイープ信号を使用したほうが、都合が良いのです。

下記のグラフは、スイープ信号で周波数応答を確認中の画像です。緑の線で、"Current Signal"と書いたものは、現在再生されている正弦波で。これに対して、その右側の"Harmonic Distortion"と書かれた小さな緑色の山は、高調波歪を示しています。赤い線は、緑の線のピークホールドしたものです。スィープ信号を再生し終え た時点の赤い線が周波数応答ということになります。
このように、スイープ信号を使用すれば、様々な情報を得られますが、ピンクノイズでは、大雑把な特性しか把握できません。低音にノイズが入っていても、信 号かノイズか区別が出来ないことになります。これが私がスイープ信号にこだわる主な理由です。
高調波歪
スイープ信号を使用して測定中の画面




(参考)測定機材一覧

機材
型式
備考
マイクロフォン
アコー7012型
1/2"音場型(電源は回路図に基き自作+乾電池)(単3 型×8本)
マイクロフォンアンプ
ユニエル電子 EF-408型
電源は乾電池(単3型×8本)
サウンドカード
Sound Blaster 5.1

プリアンプ
Accuphase C-2000型

メインアンプ
Accuphase P-350型

CD Player
日立 DVD-P900型

ソフトウェア
FFT Wave Version 7.2

音源
CD-R
WaveGeneを使用して作成した、10Hz-1kHz、及び、10Hz-22kHzのリニアスィープ信号を、CD-Rに焼いたものを使用。
これをそれぞれ20Hz-400Hz、300Hz-20kHzのレンジで表示する。

特に断りのない限りマイクの位置は、フルレンジユニットの軸上正面1mで固定している。
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