穴 開き共 鳴管システムについて
多自由度バスレフ型を開発する前の、試行錯誤中に作ってみ たシステムの紹介です。共鳴管システムのごく簡単な改造で、気に入らなければ孔を塞ぐ

システムの概要

思い付いたきっかけ

製作例-1

製作例-2



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システムの概要

共鳴管システムの起源は知りませんが、長岡先生が、カテドラルに始まり、最後はネッシーシリーズに至るまで様々なシステムを発表しておられます。このシス テムはかなり完成されたシステムと云えます。

穴開き共鳴管システムとは、共鳴管の途中に穴を開け、そこで音圧の一部を大気開放するシステムです。構造は木管楽器と同じです。それなのに、何故か長岡先 生の作例にはありませんでしたので、2004年のミューズの方舟のイベントで発表しました。一部を除いて一般受けはしませんでしたが、面白い方式なので簡 単に紹介します。

共鳴管型スピーカーシステムの殆どは、片側閉、片側開放のシステムです。管の長さの約4倍の波長となる周波数で共鳴が発生します。この共鳴管の途中に穴を 開 けると、閉端から穴までで共鳴管が構成されますので、共鳴周波数を増やすことができます。これが、穴開き共鳴管の動作原理です。

下に穴開き共鳴管の図を示します。

共鳴管
穴開き共鳴管

上の図で、右側は、開端、左側は閉端です。この管の上側の面に、穴を開けるとそこで音圧が大気開放され、開端と同等の効果が得られます。このようにする と、共鳴管の基本システムでは、長さL3の共鳴管1本だったのが、穴を途中に開けることにより、L1、L2といった共鳴管の効果も得られるようになりま す。木管楽器の穴を指で押さえると、音の高さが変えられるというのと同じ原理です。

この方式は、既に製作した共鳴管システムがあれば、途中に穴を開けるだけで共鳴周波数を付加することができ、塞げば元の動作に戻すことができます。

共鳴管は、最低域の伸ばすのに有効ですが、どうしても弱くなる周波数帯域があり、その帯域に共鳴を付加することで、補正することが可能です。代わりに、最 低域の周波数帯の音圧が弱くなるはずですが、実際に試してみた限りでは、悪影響は感じられませんでした。非常に手軽で効果的な方法です。

この方式の設計については、これ以上説明をする必要もありませんが、この補正を行うためには、下記の点に留意します。

  1. 穴は、リスナーの方向を向かないようにすること。この穴からはあまり好ましくない帯域の音も洩れてきます。従って、後方または、 外側に向けるのがこつです。
  2. 穴は大胆に開けること。あまり小さな穴では効果がありません。目安としては、スピーカーユニットの実効振動面積の1/4位が穴の 寸 法となります。
  3. あまり多数の穴を開けないこと。あまり多数の穴を開けると、最低域が上がってしまう虞があります。3個程度以下に抑えておくのが 好ましいと思います。
  4. 途中で圧力を開放するので、長岡先生の作例ように、徐々に共鳴管の面積を大きくする必要はありません。管の断面積は、一定か、開 放側で多少拡げるだけで良いと思います。長岡先生のカテドラルのような例で、スピーカーユニットを1本にしてみると面白いかもしれません。MCAP型の開 発 が一段落したら、製作してみたいと思います。

以上、非常に簡単ですので、興味のある方は是非お試しください。但し、絶対に良くなることを保証するものではありませんので、自己責任でお願い致します。



思い付いたきっかけ

私が米国に滞在していた1993年に、リコーダーカルテットというグループの演奏を聴き、突然思いつきました。米国滞在中に1号機を製作しましたが、実際 に穴を開けたのは帰国後の1995 年でした。
因みに、未だ、3号機までしか製作していません。いちばん上手に出来たと思うのは1回折返しの1号機でした。2号機は、2回折返し、3号機は3回折返しで した。折り返しはなるべく少く、1回折返しまでが良いと思います。できたら直管がベストと思いますが、置く部屋がありません...



製作例


先ず、この方式の第一号機を示します。第一号機は、効果を確かめるために、まず、ドリルで小穴を開け、様子を見てみましたが、効果を感じられず、次は、ホ ルソーで、大穴を大胆に開けました。すると、期待していた以上の効果がもりもりと現れ、考え付いた本人もびっくりしたものです。


右は、穴開き共鳴管システムの第一号機です。長岡先生に倣って、1回折返しです。少し違うのは、スピーカーユニットを閉端から少し離して付けたこと、ま た、 共鳴管にマグネットが突き出ることを嫌って、サブバッフルを付けたことくらいです。

スピーカーユニットには、TechnicsのEAS-10F20を使用しました。最初は穴のない状態で製作し、後から穴を開けました。

穴を開ける前は、低域が少し寂しかったのですが、3つの穴を開けると、低域の量感が増し、低音の豊かなシステムに変身しました。

最低域の伸びが足りなくなることを心配していましたが、作ってみると、最低域に変化は無く、最低域より上の周波数帯の厚みが付加されるというプラスの効果 だけがありました。これは、予想以上の成果でした。

音も非常に気に入っていたのですが、仕上がイマイチで、また、EAS-10F20のエッジも風化して穴が開いてしまったので、測定しないまま既に廃棄して しまいました。

このような理由で残念ながら、データはありません。

しかし、音は良かったので、自宅にもう少しスペースができたら作り直そうと考えています。


共鳴管1号機
音は、共鳴管らしく、低音が素晴らしく共鳴し、鬼太鼓座では、太鼓の大きさが実感できるほどの豊かな低音を出しながら、細身のシステムらしく、音場感は抜 群でした。使いこなしとしては、開口側から、ペーパーレゾネータを吊るすと余分な音が消え、すっきりした感じになりました。正直云って、このシステムが出 来たときには、これ以上のものは要らないとまで思いました。これだけ気に入っても、仕上が気に入らないと駄目なのです。これは教訓でした。メーカー品を粗 末に扱えないのは、仕上が美しいというのも理由だと思います。陶芸家が不出来な作品を割るように(?)見掛け気に入らない作品は、壊される運命にあるので す。音が 良くても。



製作例-2


次は、2004年のミューズの方舟イベントで発表したものです。
製作の狙いは、下記の通りです。
  1. 穴開き共鳴管の効果を確認する
  2. 折返しを増やしても共鳴効果が得られるかどうか確認する
  3. 共鳴管の断面積を小さくしたらどうなるかを確認する
これも私の他の作品と同じく、試験機です。


右の図は、3回折返しの共鳴管型スピーカーの例です。実際に製作してミューズの方舟のイベントで発表しました。製作は、イベントに応募する以前に終わって い ました。元は、共鳴管の断面積を小さくしたときの効果を知りたかったので、FE103Memorialを使用して製作しましたが、ミューズのイベントの規 定が公称10cm未満ということでしたので、用意してあったサブバッフルに、FE83Eを付けて出品しました。
素晴らしく雰囲気が良いというお言葉も頂きましたが、アピールはいまひとつでした。
ミューズのイベントには初めての参加ということもあり、用意していったCDも1枚だけで面白さを表現するには不十分だったと思います。
私の場合、面白さを重視しているので、音質最優先とはしていません。ですので、製作したら作り放しで、調整などは一切していません。他の参加者の方は、ど ちらかと云うと、音質優先、公称8cmのユニットでどこまで低音を出すか、ということに重点を置いていた人が多かったようです。また、コストも天井知ら ず、限定品の高級ユニットが目に付きました。
私のものは、最も粗末な作品でしたが、それでも、結構バランス良く鳴っていたと思います。
共鳴管-2

上の図だけでは分かりにくいので、共鳴管を展開し、また、共鳴周波数を纏めたものを右側に示します。

4本の共鳴管で折返しは合計3回、しかも共鳴管全体の真中にスピーカーユニットを付けてドライブする構造です。また、穴は、後面に2個付け、最低共鳴周波 数 を43Hz、穴の効果で、170Hzと57Hzにも共鳴効果を出そうという狙いとしました。

全体はコンパクトに纏まりましたが、結果から云うと、3回折り曲げは少し効果が出にくかったようです。

下に、インピーダンスの傾向曲線を示します。正しいインピーダンスの値ではありませんが、相対的な傾向はこれで把握できます。112Hz、163Hz、 257Hz、329Hz、405Hz...とインピーダンスが下がっているところが明確に負荷のかかった共鳴周波数であると思います。これは、管1本の両 端の間の共鳴周波数のようです。4本の管全体の共鳴については、この測定では明確になりませんでした。51Hzに小さな谷があることから、全体として多 少の共鳴はしているものの共鳴そのものは強くないようです。

穴を塞ぐと確かに音は変わるのですが、このような簡易測定では、その差を明確に捉えることはできませんでした。

共鳴管の展開図


インピーダンス傾向曲線


次に、このシステムの周波数応答を示します。ミューズのイベントでは、FE83Eを使用していましたが、この測定では、Tangbandの3"のものを使 用しています(型式不詳)。最低再生周波 数は、95Hz程度で、もう少し頑張って欲しかったところです。測定の方法については、測定につ いてをご参照ください。
周波数応答

この作品は、音としては、まあまあですが、狙い通りの結果が明確には出ていないということで、私の評価基準では、失敗ということになりました。折返しは、 なるべく少くしましょう。天井の高い家に住めれば、折返しなしで4m位のものを作ってみたいと思います。

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