MCAP-CR
多自由度バスレフ型スピーカーシステムの研究開発
物理モデルに基くシミュレーションソフトウェア開発



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自作について

  私は自作が好きで支持しますが、万人に薦められる趣味ではありません。 自作は、ある特定の条件が適合すれば、良い趣味となりますが、そうでなければするべ きではありません。ここでは、私の考えをまとめました。

自作のコスト/パフォーマンス

スピーカーシステムの自作については様々な意見があります。

自作派、反自作派は、基本的には相容れないように思われます。自分は自作派に入りますが、既に書いたように自作でなければいけないわけではなく、売ってい ないので作るのです。
自作派にも、あまり賛成できない意見もあります。例えば、下記ような意見を見付けました。

  • 自作で使用するスピーカーユニットは高級品であるが、性能と比較して割安である。
  • よって、自作すればコストをかけなくても高級、高品質なシステムを作ることができる。

この意見については賛成できる部分もありますが、賛成できない部分もあります。

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先ず自作用スピーカーユニットの価格ですが、これは、スピーカーシステムのメーカーが同等品を仕入れるであろう価格よりも相当割高になっているものと考え られ ます。メーカーであれば、スケールメリットを活かして安く仕入れられますので、原価は一般の人が購入する価格の1/3以下ではないかと想像します。単品で 販売すれば、ひとつひとつ箱に入れ、取扱説明書を付け、ネジを付け、1個単位で販売しなければならないのですから、コストが上がるのは当然のことです。部 品として販売するのであれば、数千個以上同時に製造でき、同時に購入してもらえるので、部品メーカーが在庫を持つ必要も多くありません。部品とするか、製 品とするかによって 価格は相当に違ってしまいます。
ものは 違いますが、例えば軸受などは、一般の人が購入できる小売店では、10倍の値が付くこともあります。これは、販売する個数が違うので当然のことなのです。
以上のことから、自作用のスピーカーユニットは、システム品の部品に比べて相当に割高になっているものと想像できます。

これとは別に、板材などの部品の入手も個人では圧倒的に不利になります。板材などは卸価格と小売価格では相当な差が有ります。また、接着剤、ハタガネ、工 具、塗料など本体以外にかかるコストはかなりあります。また、忘れてならないのは人件費です。アルバイトの人でも1時間に1000円位は稼ぐことができま す。自作をすると完成までに数十時間使うことが普通ですので、自給千円の人であっても数万円分は人件費ということになります。こう考えると、設計や製作が 楽しいという人でなければ、自作は割高ということになってしまいます。安くできた、という意見もよく読むと過去に購入した部品や材料を使用したから、とい う理由だったりします。

とは云いながらも、このような意見をウェブに載せる理由は、自作をお勧めしたいからです。重要なことは、自作の欠点を知り、それでも自作がいいと思うかど うかです。自作には欠点があっても自分は好き、という人が自作に向いています。

自作の音は良いか

自作品の品質については、上記の理由からメーカー品を凌ぐということは、難しいと思います。しかし、私を含めて、なぜ自作のほうが音が良いと考える人がい るのかという と、それは、フルレンジユニットの音 が自作の 音という印象が強くなっているのではないかと思います。

フルレンジユニットの音は、マルチウェイの音とは一聴して分かる違いがあります。言葉で説明するのは難しいのですが、フルレンジの音は、自然さにおいて、 マルチウェイとは全く異ります。マルチウェイの音は、正に、オーディオシステムの音、フルレンジの音は、自然な音、というように感じられます。

スピーカーシステムメーカーも、フルレンジは使用していますが、それは、大抵、テレビやラジオに付属するような簡易スピーカーシステムです。簡易スピー カーシ ステムの場合は、音が出ることが第一優先なので、キャビネットにはコストが掛けられません。このような事情で、フルレンジは安物というイメージが出来上 がってしまいます。

ところが、フルレンジは、正しく使えば見違える音を出すことができます。もしも手元に、上記のような安物のスピーカーユニットがあった場合、しっかり固定 し てみてください。全く違う音を出すことができます。フルレンジシステムは、アンプの差を見事に鳴らし分けることができます。もっとも、コストを掛けすぎた 場合は、コストに見合いま せんので、あくまでも実験のレベルです。良い音を出そうと思えば、ユニットにもそれなりのコストをかける必要があります。

自作する価値のあるシステム

上記の理由から、自作をするには、明確な理由を持つほうが良いと考えます。最も無難なのは、フルレンジの音を好ましいと感じる趣向があり、かつ、その良さを活かせるシステムを作ることだと思います。

フルレンジユニットを使用して最も効果を上げやすいのが、バックロードホーンだと思います。バックロードホーンには、長岡先生の作が多く発表されています ので、その通りに作れば、フルレンジの良さを楽しむことができます。問題点は、製作が難しいことと、万人の好みに合うとは限らないということでしょう。

フルレンジユニットを使用したバックロードホーンが好みの音ではないという人は、どちらかというと、経験の長いマニアが多いようです。簡単な理屈で考える と、あまりいい音がしそうにない、そのような心理的効果もあるようです。スピーカーユニットひとつでいい音がするなんて、何かインチキ臭く感じるのも当然 のことです。市販品の殆どはマルチウェイを採用しているからです。

ところが、予備知識のない人は、大抵はフルレンジシステムの音に対して驚きます。また、長岡先生の著書を事前に読んでいた人も、上記とは逆に、いい音がするはずだ、という心理的効果が働き、好ましい音に聞こえるということもあるでしょう。

音の評価方法については、定番というものはないようです。最も定番と云えるのは、音楽を聴いて好き嫌いを判別する方法です。定量的ではありませんが、本来の目的からすると、最も好ましいとも云えます。

周波数特性が最重要だと考える人もいます。しかし、オーディオの世界で周波数特性というのは、周波数応答の定常特性です。定常特性というのは、入力の信号 が変化したときに、出力の信号が変化して落ち着いた後の特性です。入力の変化に対する出力の変化が落ち着くまでの間の特性は、過渡特性と云われ、重要なの ですが、これを定量的に評価するのは、難題でもあります。最高の過渡特性は、何もないか、または、無駄時間だけしかないことです。これは、将来に亘って不 可能とは断言できませんが、恐らく、あと数百年は無理なものと考えます。スピーカーシステムの振動板は重く、または、剛性が弱いほど過渡特性が悪くなりま す。フルレンジで特に小型のものは、この点が有利です。従って、小型フルレンジのほうが切れの良い音がするのです。長岡先生のスワンなどのシステムが高い 評価を得るのは、主にこのような理由によるものではないでしょうか。人間の耳は、過渡特性を無意識のうちに評価しているのではないかと思います。私は、定 常特性だけ示して周波数特性が良いと主張するだけでは不十分と考えます。

過渡特性を改善するためには、スピーカーの振動系を軽くすること、また、アンプの電源を強化することが効果的です。アンプについては、電気知識のある人は 自作するか、自分のようにあまり自信のない人には、特性の良いものを購入するという方法がありますが、後者が無難でしょう。スピーカーの振動系を軽くする ためには、振動板の口径を小さく、軽いものを選ぶというのが簡単な方法です。

振動板の厚みを変えずに口径を大きくすると、剛性が小さくなるので、口径は小さなほうが有利です。また同時に口径が小さいと軽くなります。フルレンジは、大抵、ウーファーよりも軽く出来るので、この点でも有利です。

マルチウェイのウーファーは、先の定常特性としての、低音特性を重視するので、振動板を大きくする場合があります。振動板が大きくなると、大抵は重くな り、重くなると、共振周波数が下がり、また、入力に関係なく共振周波数での振動が強くなります。私は、そのような音は好きではありません。低域がボンボン と鳴るのはこのように、特定の共振周波数を持つための癖です。癖とは、入力に関係なく発生する振動と云っても良いと思います。

バックロードホーン

入力に関係なく発生する振動が少いシステムは、ホーンタイプであると考えます。これは、ホーンに対応した周波数域に対して広く負荷をかけるシステムです。 実際の製品ではこのように理想的にはならず、ある程度の癖は残りますが、原理的には、ホーンは負荷のかかる範囲が広いものです。

バックロードホーンは、ある周波数以下の帯域については、振動板の大きさに頼らず、ホーンを利用する方式です。理想的に作れば、共振に頼らず、必要な周波数帯域に対して、広く負荷を掛けることができます

バックロードホーンの欠点は、低音が回り道をするために、高音よりも遅れて到着するということです。遅れの量は純粋に回り道する道程で決りますので、ホー ンをリスナーに向けて長くする以外に克服する方法はありません。しかし、この遅れが悪いとは、私は考えていません。バックロードホーンの長さは、精々3 メートルの場合が大半です。


応答特性 CDなどのレコードで、オーケストラをマルチマイクで録音した場合には、本来遠方にある大太鼓のような低音楽器の音が、遅れなく収録されてしまうので、 ホールで聞くのとは変わってしまいます。このような意味では、低音は遅れたほうが望ましい場合があるのではないでしょうか。勿論、録音の状況はそれぞれ異 るので何がベストかは分かりませんが、私には、低音の回り込みによる遅れのあるバックロードホーンのほうが大型のマルチウェイよりも生々しく聞こえます。 実際にもホールで聞いた場合は、音が反射しながら様々な経路でリスナーに届くので、ホールで聞くような音を求めるのなら、この回り道を気にしてもしょうが ないように思います。

 ここで回り道による遅れと書いたのは、制御では、無駄時間 (Dead Time)という量になります。無駄時間とは、純粋な遅れ時間になります。

無駄時間と紛らわしいものに、定常状態に達するまでの時間(TTSS:Time To Steady State)があります。定常状態とは、入力が変化した後に、出力が安定したところの状態を指します。但し、どこで安定したと定義するのかは、明確な定義 はありません。

一般の制御では、過渡特性を論じるのにTTSSという用語は用いずに、一次遅れの時定数を用いて表現します。一次遅れの時定数というのは純数学的な概念 で、一次遅れというプロセスが開始した後に出力の 変化が始まった時間から、定常ゲインの約63%となる時間を云います(約63%といのは定義ではありません)。実際の現象では完全な一次遅れは存在しませ んが、実用上十分に近似できる場合が多く、制御の問題を論じるのに都合が良い ので教科書類にはこの用語を用います。

直感的には無駄時間+時定数よりもTTSSのほうが分かりやすいので、TTSSを用いて説明します。

右の図では、同じ入力に対して出力が(A)のタイプのものと(B)のタイプのものがあります。(A)は、無駄時間が短く(完全なゼロは不可能です)、 TTSSが長いもの、(B)は逆に、無駄時間が長く、TTSSが短いものです。

無駄時間は、信号経路に依存しますので、バックロードホーンの低音は、無駄時間が長くなります。これに対して、マルチウェイの低音は、無駄時間が短いという特長があります。
しかし、同等のアンプを使用した場合には、無駄時間の後の立ち上がるまでの時間は、振動系が軽いほうが短くすることができます。バックロードホーンのよう なシステムは、一般的に振動系が軽いので立ち上がりは速くなります。これに対して、振動系の重いシステムでは、ゆっくりと動き出し、しかも、オーバー シュートしやすくなります。無駄時間が少なかろうとも、TTSSが長ければ意味はありません。

実際の遅れを論じるためには、TTSSを評価しなければなりませんので、無駄時間だけ評価しても意味がありませんが、バックロードホーンは遅いというのが 大抵の専門家の意見です。これに対して、長岡先生は、結果としてバックロードホーンのほうが速いと書かれています。長岡先生の書かれた内容を図式的に説明 したものが上記の図です。

上記の図で、振動系の重いマルチウェイは(A)型、振動系の軽いバックロードホーンは(B)型となります。

大型のウーファーは、回り道による遅れはありませんが、振動板が大きく、剛性が低いので、過渡特性は悪くなります。結果として、大型のウーファーをもった マルチウェイのほうが遅れて感じることは度々あります。また、固有の振動数が乗りやすいので癖が感じられる場合もあります。

理想的な特性は、無駄時間があっても、立上がりの時間がゼロに限りなく近い特性になります。こうであれば、癖は全く無く、録音された状態の音を聞くことが できます。しかし、このようにするためには、空気を含む振動系の質量を限りなくゼロに近付ける必要があり、結果として実現不可能な方法です。

上記の内容を考慮すると、バックロードホーンは、かなり理想に近いシステムであると考えられます。長岡先生が、スーパースワンというシステムを、リファレンスに使用しておられたのは、このためだと思います。

共鳴管

長岡先生が愛好されたもう1つの方式に共鳴管構造があります。共鳴管構造は、パイプの共鳴を利用するもので、これは、長さによって共鳴する周波数が違うので、バックロードホーン構造と比較すると、癖が付き、理想からは外れてきます。

しかし、共鳴管構造の作例を聞くと、上記の欠点を上回る利点が感じられますので、優れた方式であると思います。技術的な優位性は、長岡先生が解説しておら れますが、私には本当にそうなのか、よく分かりません。むしろ技術的に考えれば悪いことのほうが多いように思います。しかし、音はいいと感じます。最低域 を延ばすのも、長くするだけなので、簡単です。音が良ければそれで良いわけですが、主流派は、歯牙にも掛けないようです。きっとアレルギーがあるのではな いでしょうか。

共鳴管の最大の利点は、設置面積が小さいことだと思います。従って設置はラクですが、安定性が悪い、見た目の圧迫感が大きいという問題もあります。これらの問題点を考慮すると、私の場合は、現住居では製作するのに躊躇します。音は好きなのですが...
共鳴管システムの改良型は、こちらをご覧ください。

密閉型

密閉型は、かつては良く見ましたが最近は少数派のようです。すなわちあまり売っていないことに着目すると、製作する価値がありそうです。しかし、密閉構造の単なる箱であり、工夫の余地はあまりありません。この点から考えるとあまり作っても面白くなさそうな気がします。
音の良し悪しで考えれば一考の余地はあると思いますが、私は、工夫の余地が少いものは、態々製作する気になれません。

バスレフ型

バスレフ型は、一般には、箱の大きさとダクトの寸法で決ります。しかし、同じ共振周波数のものでも、箱の大きさとダクトの寸法の組合せが無限にあり、工夫 の余地があります。一般の計算式もありますので、研究すれば面白いと思います。私が良いと思うのは、バランスの良い公称16cm径のフルレンジシステムだ と思います。その他では、優位性が出しにくいかと思います。
シングルバスレフ型は、箱の共振周波数がひとつなので、癖が出やすくなります。低音はそれなりに出ているのだが、音は、ボンボンと一本調子で、よくよく聴 いてみると、ジャズベースの音程が分からない、というシステムもあります。マニアは、この癖を避けるために、ダクトをスリット型にしたり、スパイラルにし たりしますが、簡単なパイプダクトの比べると効率は下がります。

多自由度バスレフ型

多自由度バスレフ型は、空気室を小分けにして、ダクトの数を増やしたものです。バスレフ型は、ばね−質点系(Spring-Mass System)で構成されています。空気室が、ばねの働きをし、ダクトの中の空気が、質点として働きます。このため、空気室とダクトを上手に増やしてゆく と、質点の自由度が増し、結果として、共振周波数が分散されます。私が開発した、MCAP-CR型は、効率良く自由度を増やすようにしたシステムです。開 発時は、低域側のレンジを拡げ、低域の音圧を上げることを目指したものですが、実際に出来てみると、それに加えて、低域の癖を減少させる効果があることが 判りました。癖の強いシングルバスレフ型とは異なり、MCAP-CR型では、ジャズベースの音程を明確に再現することができます。

なお、空気室を増やさずに、ダクトだけ増やしても自由度は増えませんのでご注意ください。

バッフル型

バッフル型を売っているのは見たことがありません。個人事で恐縮ですが、義父は、3畳ほどもあろうかというバッフル型のシステムを使用していました。私に はあまり魅力に感じませんでしたが、開放感のある音が好きという人にはいいかもしれません。売っていなければ作るしかありません。工夫する余地は少いと思 いますが、上記の理由から、好きなら作るべきと思います。

自分なりの結論


1辺250mmの立方体TR080b型
大抵の愛好家は、居室やリスニングルームに制約があります。その多くは、寸法の制約です。
家具の配置に合わせ、自分の部屋に無駄なく配置できるシステムを目指すには、スピーカーシステムの自作が有効な手段です。
更に、部屋にデザインを合わせるなど、市販品とは一味違う、自分だけのシステムを、自分の好みに合わせて製作出来れば、云うことはありません。
設計・製作にはそれなりの知識と経験が必要ですが、目的が明確であれば、自作は、有効な手段になるでしょう。

MCAP-CR型のもうひとつのメリットは、形状設計の自由度が大きいことです。トールボーイ、立方体など、様々な形状にすることができ、部屋に合わせたシステムを作ることができます。

寸法・形状が部屋にマッチし、なおかつ、音が好みに出来れば云うことはないですね。

TR130e2型


長岡先生のこと

私は、中学の頃に、FM雑誌で、長岡先生のことを知りました。そして、先生の多くの記事を読み、影響を受けて来ました。
長岡先生に直接教えを受けたわけではありませんが、著書を読んで教えて頂いたことが多いので、先生と呼んでいます。長岡先生に ついては、このページを読んでいる方には説明の必要がないので、先生のプロファイルなどはここには書きませんが、その代わり、先生の著書から得た私なりの 理解 を記します。

先生の教えを一言で表せば、”鉄則はない”ということでしょう。別な表現をすれば、”鉄則がないことが鉄則”ということになります。長岡先生が、長岡鉄男 という ペンネームを使用しておられるので、”鉄則”という用語を使われている方が多いのですが、私は、上記のように理解しています。

先生が、見捨てられていたバックロードホーン型や共鳴管型を推進したのも、ハイファイスピーカの鉄則らしきものに挑戦したからであると考ています。こうす るこ とによって、一旦見限られた方式を蘇生させたのではないでしょうか。先生があと100年も生きられて、バックロードホーン型や共鳴管型がメインストリーム になったな ら、今度は別な方式を推進されたのではないか思います。先生の言葉を借りれば、どの方式も一長一短で、どれがベストということはないということだと思いま す。

私も上記の鉄則を守ることにより、面白いものを開発することができました。

第一は、穴開き共鳴管型で、これは、ミューズの方舟のイベントで発表し、一部では評価をして頂いたものです。穴開き共鳴管型の原理は単純で、共鳴管の途中 に開口を 付けると、そこで圧力が一部大気開放されるため、共鳴周波数を増やすことができるというものです。木管楽器を真似しただけであり、オリジナリティありませ んが、何故かこのような方式は他に見ませんでした。
  次に挑戦したのは、バスレフ構造の発展でした。これが、本文に説明してある並列配置小部屋構造型スピーカ(MCAP-CR)です。こちらは、完全オリジナ ルで、意図した通 りの動作が得られ、ある方のご協力を得て、特取得することができました。

以上のように、私の作品は、先生の教えを元に開発できたものであり、皮肉にも先生の実験されなかったことを実施して面白い効果を上げることができました。

以上のように、私の作品は、先生の教えの自分なりの理解を元に開発できたものであり、先生の実験されなかったことを実施して効果を上げることがで きた。ご存命であれば、是非聞いて頂きたかった方式です。

長岡先生の作品と評判

長岡先生の作品は、マルチウェイからフルレンジまで多岐にわたります。しかし、私が唯一製作した長岡先生の作品はD-111アンモナイトMだけです(この 作品は後にエスカルゴと名称を変えたようです)。私は、オリジナルのアンモナイトシリーズの記事を読んですぐに製作してみたくなりました。
アンモナイトシリーズはスパイラル状のバックロードホーンで、バッフル面積が広く、製作が比較的簡単なのが特徴です。私も、東急ハンズでシナベニア板を切ってもらった後は、仕上を除くと一日で完成しました(但し釘の仕上でしたが)。従って音もすぐ出すことができました。
最初は長岡先生の推薦に従って、TechnicsのEAS-10F10を使用していましたが、とてもつまらない音に感じ、EAS-10F20に変更しまし た。10F20に変更してからは低音も出るようになり多少良くなったのですが、窮屈な感じがしていました。そこで、頑張って購入したFostex のFE108S に変更したところベストマッチングと思えるほどまるで違った鳴り方になりました。D-111の低音は比較的軽めだったため、中高域のレベルが多少低い FE108Σに変更してみましたが力が弱く、つまらない音になってしまいました。この作品は、12cmクラスのユニットには小さく、10cmクラスでも特 に強力なものでなければマッチングが悪いように思います。
その後は、長岡先生の作品は作ってみたいとは思うものの、なかなか踏み切れないまま、独自路線に走るようになりました。長岡先生の作品のコピーを製作していないのにはいくつか理由があります。

  1. 長岡先生の作品のうち、気に入ったものは、幅が広かったり奥行きが大きかったりしてプロポーションが狭い部屋に合わなかった。
  2. 長岡先生の作品は、様々なバリエーションがあるが、同種のもののマイナーチェンジを繰り返したベストものが少い。同種の設計で改善を積み重ねた作品は、スワンシリーズとD-5xシリーズだけだと思います。いずれも狭い部屋にはベストとは云えませんでした。
以上の理由により、長岡先生の作品は、そのまま製作することがなく、そのうちに長岡先生は亡くなってしまいました。そのうちに、独自の方式で長岡先生の作品に挑戦しようという意欲が沸いてきましたので、今は独自路線に走っています。
独自路線とは云っても、長岡先生の作品がその根底にある訳で、長岡先生の著作に出会わなかったら、未だに、大型マルチウェイの道を走っていたかもしれませ ん。正直言えば、スーパースワンはいつかは製作してみたい作品です。スーパースワンを聞かずして、自分の音を語るなかれ、とは思いますが、居住空間の問題 は無視できません。

長岡先生は、あまり知ったかぶりをせず、謙虚に書かれていたため、先生の能力は意図的に隠されていたと思います。そのあたりが、他の評論家の方々とは相当 に違っていたところだと思います。長岡先生の表現は非常に含蓄があり、たまには、『この人は無知なのか』と思ってしまいそうになる表記もあります。しか し、よく読むと違って感じられるところが、先生独特の味でもあります。こういったところが、一部の専門家には気に入らないらしく、先生に対する僻みを丸出 しにしている専門家も目に付きます。ところが長岡先生の表現は具体的で分りやすくアマチュアの指示を受けたのだと思います。それゆえ、無くなってから何年 もたっても未だに信奉者が多いのでしょう。オーディオ評論という短い歴史の中で、長岡先生は、紛れも無くナンバーワンでしょう。

オーディオ評論

オーディオ評論というのは、紛れも無く怪しい評論分野のひとつでしょう。いつから始まったものかは分りませんが、1970年の初頭に自分がオーディオに興 味を持ち始めた頃には既に定着していたようです。しかし、オーディオ評論は自分にとっては、非常に怪しいものでした。今まで、長岡先生の評論以外に、信じ られた評論は殆どありません。ベストバイ等を買ってみたこともありますが、心理的には良かったものの、自分の満足度が上がったことは一度もありません。し かし、使ってみて満足度の高い製品があったのも事実ですので、オーディオ製品そのものが胡散臭いと思っているわけではありません。勿論、長岡先生ご推薦の ものでも気に入らないものはありましたが、先生のご推薦には、好き嫌いを超えた理由が明確だったので、騙されたという感じはありませんでした。

オーディオ評論の中で、気になるのは不思議な表現です。例えば下記のものは自分には良く理解できません。

  1. 紙臭い.....何のことでしょう?紙にどのようなイメージを持っているのか人それぞれだと思います。コーン紙が紙製だから馬鹿にしているのかもしれませんが、自分にはイメージが湧かないし、そもそも、私は、紙という素材は非常に優れていると考えています。
  2. 音の鮮度が高い.....鮮度が高いってどういうことでしょうか?鮮度が低いと耳を壊すのでしょうか?新しい録音のほうが鮮度が高いとか??  古くても保存状態が良いので鮮度が良いとか?? 録音の評だったら納得できます。
  3. ソースに入った元音.....そんなの録音した本人でさえ知らないことでしょう(というか知っていると云えば詐欺になる?)。自分でモニターした音と、変 換されて記録された音が同じはずはありません。勿論、こういう音にしたいという意図はあるでしょうが、何で他人が分るのでしょうか?複数のマイクの位置に 同時に耳を置いて聞くなんて不可能です。そもそも録音した人意外は原音を聞いていない訳だし、たとえ原音を聞いていたって、位置によって違うはずだ し...恐らくモニタースピーカーの音であれば、録音した人は比較できるのでしょうが、それでもモニタースピーカーの音がベストとは誰も思わないでしょ う。
  4. 迫真度.....迫真の演奏を普通のレベルのオーディオ装置で聞けば迫真度は普通に感じますが..... 勿論1940年代の録音だって迫真度は凄まじいものがあります。やはり迫真度は、演奏の評に使用する用語ではないでしょうか。
自分にとって、良いオーディオ装置の音とは、生の演奏に代わりうるものです。生の演奏だって、気に入らないこともありますが、オーディオ装置だったら、気 に入った演奏だけを選んで聞くことができます。だから、生の演奏と聞き違えるほどでなくても良いわけです。そもそも、生の演奏だからと云って音が良いわけ ではありません。PAで聞いた生の音は最悪です。アコースティックな楽器の音だって、ホールが悪いと潰れてしまいます。だから、聞きやすく録音された音 は、生以上の訴求力があることもあります。勿論、最高の生の音を超えるオーディオ装置があるわけはありません。だから、自分にとっては、オーディオ装置は ある程度のレベルを満たせば、満足となります。困ったことに、一旦『これ以上の音はないだろう』と思っても、そうでなくなってしまうところです。しかし、 後から感じた良い音のほうが本当に良い音なのかよく分りません。
ポピュラー系の録音の良し悪しは、さっぱり分りません。聞くに堪えないほど酷い音のものがあるのは確かですが、録音の定評のあるものだって、人工音だし、 ヴォーカルもオンマイクではアコースティックではなく、マイクの音を聞いている感じがします。このような録音は、再生装置を含めた全体のパフォーマンスで 評価するものであり、完璧に近いオーディオ装置で聞けばもっと良くなるという訳ではかならずしもありません。こういう音を聞いて、オーディオ装置の評論を するのは、難しいだろうと思います。長岡先生は同様なことを書いておられます。ポピュラー系は、演奏者の推薦があれば、それがベストなのではないでしょう か。

最もうんざりするのは、大型のマルチウェイでなければ本物の低音は再生できないという類の論評です。こういう論評に嫌気がさしたのか、長岡先生は、口径が 小さければ小さいほど質の良い低音が得られる、と皮肉っぽく書いておられました。私もそちらに賛成です。軽くて小さなスピーカーユニットからキャビネット の工夫で得られる低音のほうが、生に近いと思います。これは、感覚の問題なので証明が難しいのも事実ではありますが、長岡先生の作品を愛好する人々には一 致した見解なのではないでしょうか。

長岡先生は、金をかければかけるほど音が悪くなる、というのに近いことを書いておられました(勿論皮肉ですが)。上記のような評論を信じて物量投入すれ ば、それなりに良くなるのでしょうが、そのような人々が、いずれフルレンジ一発の音に移ってゆくということになると面白いですね。

長岡先生の真髄

リンクで紹介している大山さんのサイトのアンケートを読んでいたところ、長岡先生の作品をそのまま製作した人は意外に多くないのではないかと思うようになりました。それと同時に長岡先生の真髄のようなものが、何となく見えてきました。

(1)完成させないこと
長岡先生の真髄の第一は、完成させないことです。他の評論家の先生方のように、手を加えて小改善を重ねるということは、一切しません。

(2)改善点を残すこと
これも(1)と同様です。改善可能な点を幾つか必ず残しておきます。例えば、バッフル面積は極小が良いと云いながらも敢えてそうしない作品を作ります(D-5xシリーズなど)。
また、バックロードホーンは、超低音の再生が難しい、と書けば、挑戦したくなります。

(3)自分が作った原則を破ること
例えば、バックロードホーンの絞り率は、0.6〜0.8と云いながらも、敢えてこの範囲を超えた作品を作ります。

上記の3点は、長岡先生の記事を読んだ人にとっては非常に重要なことなのです。『こうしたらもっと良くなるだろう』、『こうしたらどうなるのかな』、また は、『本当?間違ってない?』などと思わせることにより、読者を自分の世界に引きずり込みます。結果として、全く同じ作品を作る人は意外に少い、というこ となのでしょうか。『こうしたらもっと良くなった!』と思っていたら、本当は、長岡マジックに嵌っているということなのでしょう。勿論自分もその一人では あります。

このことは、意外に見過ごされていると思います。


注意事項

MCAP-CRは、2012年に特許が 成立しています(特許第 5083703号)
契約による以外のMCAP-CRの商 用利用は禁じます。
MCAP-CRの商用利用を検討され る場合には、 ご連絡ください。
評価のために、実際に製作することは、商用利用とは看做しません。
また、商用以外の使用に制限はありません。

連絡先: mcapspeakers@gmail.com

管理人: 鈴木 茂

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