多自由度バスレフの研究開発
日記アーカイブ

多自由度バスレフ型スピーカーシステム開発日記のアーカイブです。
ブログの日記も順次アーカイブしてゆきます。
資料としてお読みください。

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2009/03/23 パラメータQ0の解明へ(2)
2009/03/20 仮設台の設置
2009/03/12 低音再生限界
2009/02/28 励磁型ドライバー用MCAPエンクロージャーTR130c完成
2009/02/22 ゆったりした時の流れ
2009/02/14 TR130dダクト仕上
2009/02/08 Feastrex コイズミ無線から販売開始
TR130d
2009/01/26 Feastrex
2009/01/17 Feastrex D5e Type U - MCAP TR130bのお嫁入り
2008/12/26 ミューズの方舟2008の会場で頂いたご質問について
2008/12/15 ミューズの方舟2008
2008/12/07 名人アンプの修理-その 2
2008/11/28 MCAP-CR型の再評価
2008/11/26 MCAP初期モデルの TR080a型
2008/11/16 共通ソフト
2008/11/09 HX132
2008/11/02 安曇野の響き
2008/10/26 測定の秋
2008/10/18 リニアスィープ導入
2008/10/13 インターナショナルオーディオショーとハイエンドオーディオショーを聞いて
2009/03/22 パラメータQ0の解明へ
2009/03/16 MCAP-CR型共振周波数簡易計算シートの追加と英語ページの拡充
2009/03/08 Feastrex愛好者の集い
2009/02/25 TSパラメータの勉強
2009/02/15 やっちゃった!
2009/02/11 TR130d半完成
2009/02/02 アンプの導入
読者の方からのお便り
2009/01/24 新作TR130c
2009/01/12 Feastrex D5e TypeU
2008/12/23 Feastrex導入
2008/12/21 アンプの交換
2008/12/10 あてにならない自分の耳
2008/12/06 ソースの変更
2008/11/30 ミューズの方舟2008 スピーカーコンテンストでの選曲
2008/11/27 測定方法の発展
2008/11/23 名人アンプの修理
2008/11/15 聞くことが最高のチューニング?
2008/11/08 Feastrexの使用を検討中
曲目選び(その2)
2008/10/19 曲目選び



2009/03/23

パラメータQ0の解明へ(2)


昨日、Q0を基にして他のパラメータの散布図を書いてみましたが、どうしてもしっくりしませんでした。

し ばらく考えているうちに、口径毎に整理したら何か分るかもしれないと思い、公称3インチ(または8cm)のものだけを取り出してプロットしてみました。サ ンプル数は29あります。3インチはそんなに多かったかな?と思いますが、Tangbandは種類が多いので、そこそこのデータ数になりました。

3インチだけ並べてみると、どれも多少は右下がりの傾向が見られるようです。しかし、例外もあり、このように少いデータではやはり結論めいたものは見えて きません。

それでも、2インチから8インチまでを並べた下のデータよりは何かを物語っているように見えます。

しかし、一番下の緑色の点で示した、坪量相当値は、見事に想像と反対の傾向を示しています。Q0が小さいほうが、振動系を軽くしてあるという予想は見事に 裏切られました。上の2つのグラフと比べると、最も明確な傾向を示していますが、予想とは反対の傾向でした。


これだけで結論を出すのは早計ですが、これでは、Q0という値の意味が見えてきません。

それにしても、何故このような重要そうなパラメータの物理的な説明が見つからないのでしょうか?分ったような気がしただけでは先がないと思うのですが。


長岡先生は、Q0と いう値をどのように設計に使用したかというとそれは、バックロードホーンのスロートの絞り率を決めるためだけでした。それ以外には、Q0というパラメータ は使用していないようです。

長岡先生は、何となく分ったような理論は使いたくなかったのでしょう。上記のバックロードホーンの絞り率の計算にしても、提案された式からは外れたものが かなりありました。


しかし、何とか、空気室容量の適正値を明快な理屈に基いて決めたいものです。


2009/03/22

パラメータQ0の解明へ

以前に書いたように、パラメータQ0の物理的意味がどうしても分らないので、Fostexと Tangbandのフルレンジ75機種のパラメータQ0について調べてみました。

Q0に対するスピーカーユニッ トのばね定数[N/m]

最初に、スピーカーユニットのばね定数とQ0との関係をプロットしてみました。ばね定数は、カタログには出ていないので、f0とm0とから計算しました。

このプロットを見ると、Q0が大きいほどばね定数が大きいようにも見えるし小さいようにも見えます。相関係数の符号を計算すれば良いという訳ではありませ ん。サンプル数が小さすぎるし、メーカーが2社だけなので、全体を表現できているとは考えられません。

ばねが硬いほど共振の度合いが小さく、全体として右下がりになると考えていましたが、必ずしもそうではないようです。

しかし、これだけで物理的意味を推定するには不十分なデータと云えましょう。

Q0に対する低域周波数応答の 傾き

次 に、Q0と低域の落ち方との関係を調べてみました。低域の落ち方は、メーカー発表の周波数応答曲線から、50Hz、100Hz、200Hzの3点の応答値 を読み、横軸を、周波数の常用対数値、縦軸を読取値[dB/W-m]として最小二乗法で勾配を計算し、その勾配値を縦軸にしました。

勾配の値が大きいほど、低域のレベル落ちが大きいということになります。

これも、Q0が小さいほど共振の度合いが小さいので、低域のレベル落ちが大きく、全体として右下がりの傾向を予測していましたが、グラフを見るとそういう 訳でもないようです。これも、右上がり、右下がりのどちらにも見え、相関は明確ではありません。

これも上記と同様に物理的意味を推定するには不十分なデータと云えましょう。

Q0に対する坪量相当値

次に、Q0とm0をa0で割った値(製紙工業の用語では坪量に相当)[kg/m2]との関係をプロットしてみました。

相当坪量が小さいほど軽く共振の度合いが小さくなります。

これも右上がりの傾向を想像していましたが、外れのようです。

同様に、これだけでは不十分と云わざるを得ないサンプル数なのですがどうも釈然としません。

上記はメーカーの発表値に基くもので、恣意的にまとめたものではありません。多数あるパラメータのうち2つだけを取り出して比較したのでは、充分でないの は当然ですが、それにしても、傾向が明確ではありません。
益々謎は深まりました。いつになったら適正容量値の推定に辿り着けることやら...

2009/03/20

仮設台の設置

TR130cを製作してから、 どうも高域が以前と異るので、簡単な台の上に置いてみました。
台に載せた状態で、スピーカーユニットの高さは、床から約770mmになりました。以前は、約590mmだったので、180mm程高くなりました。
この差は聞く耳とスピーカー軸の角度の差となって大きく影響していることが再確認できました。

以前にkenbo-さんが来られたときに、TR130dを聞いて、体を低くされていたのを思い出しました。
高さの差は思ったよりも大きいのです。

スピーカーユニット軸の高さの最適値は900mm程度だそうです。これは、長岡式のバックロードホーンの研究結果でそのようになっているらしいのですが、 やはり、それ位欲しいと思います。

今回は、180mm高くなってそれでも770mmですが、元の状態と比較して高域のキレが増し、また、関係ないはずの低域も明確になった感じがします。

やはり、今の設計ではスピーカーユニットの高さが足りないようです。

5m離れて聞ける部屋があれば大して関係ないのですが...


2009/03/16

MCAP-CR型共振周波数簡易計算シートの追加と英語ページの拡充

3/09に予定より早く、簡 易計算シートを追加しました。
その理由は、思ったよりもMCAP-CR型を試す方が多く、できれば、試される場合には、私の作品のコピーだけでなく、オリジナルの作品も試して頂きたかったた めです。

私 は、昨年のミューズの方舟のスピーカーコンテストに出品しました。理由は、勝って自慢したかった訳ではなく、MCAP-CR型というシステムの特徴とその面白さ を知って頂きたかったためです。ウェブにおいて字で書き表すのもひとつですが、その効果は聞かなければ分らないと思います。今迄に、実際に製作されたとい うお便りを頂いたのは3名でそれはいずれもQU080b型ですが、皆様実際に音を聞いてびっくりされたそうです。文学的表現を積み重ねるのは得意ではな く、好きではないので、できるだけ、定量的に表現し、実際に聞いて頂くことによってのみ、その優位性をお伝えできると思います。コンテストの勝ち負けなど 私にとってはどうでも良いことでした。技術の優劣を決められるのは時間だけです。100年後にも残っていられれば、それは本当の意味での価値を示すことに なります。

MCAP-CR型は、アマチュア向きであり、設計の自由度が高く、また、癖も少なくできることがだんだんと分かってきました。あと は、主空気室の容量の決め方と、外部ダクト断面積の決め方のガイドラインがあれば、長岡先生のバックロード設計法並みに標準化されると思います。それに は、TSパラメータをしっかり研究しなければなりませんが、あと数ヶ月の後には何とかしたいと思います。

MCAP-CR型については秘密は一切 無く、全てを公開していますし、不要と判断して公開されていない情報であっても要求があれば公開します。それは、自分が死んだ後にもそのまま生き続け更に 発展して欲しいからです。また、内容に自信が無ければ公開することはできません。公開できないものにはそれなりの事情があると考えても良いでしょう。

3/15には、英語ページの拡充を実施しました。英語ページでのMCAP-CR型の説明は、PDFファイルのみでしたが、HTMLで簡単に読めるようにしまし た。国内で、MCAP-CR型がそこそこ認知されて来たようですので、次は外国に向けて発信したいと思います。従って、簡易計算シートの 英語版も公開しました。英語版と云っても大したものではありませんが、日本語よりは読める人が多いと思います。

更に、英語版には、日本語版にないコンテンツとして、Feastrex ドライバーを使用したアプリケーションに ついて記しました。理由は、良いドライバーに適用することで、その特徴を外国の方にも知って頂きたいためです。そこには、TR130b/c/dの3種類の アプリケーションについて記し、自分の評価を書いています。実際に試せたのは、Nf5 Exciterだけですので、評価は限定的ですが、Nf5 Exciterには、ミューズの方舟で使用したTR130b型がベストマッチだったと書きました。また、D5eを使用すれば違う評価になるだろうとも書き ました。改善したつもりでもそれが必ずしもベストにはならないものだと改めて感じました。

この内容は、日本語にする予定はありませんが、書いてあるのはこの程度のことだけです。英語のページに書かなかったことをひとつだけ書きます。それは、 TR200a型を改造したTR130d型の共振周波数の計算方法を簡易法にした理由です。
今 迄は、設計にあたっては、詳細文書のAppendix-2に示したように、周波数を1Hzごとに、固有値計算の元になる行列式(の定数倍)を逐次計算し、 正負が逆転したところに固有値があるとして、共振周波数を推定してきました。しかし、設計によっては、計算過程で、ゼロ割に近くなるところがあるらしく、 結局は、行列式(の定数倍)を周波数ごとにプロットし、なめらかに繋がっているところだけを固有値として選んできました。しかし、TR130d型では、外 部ダクト側の共振周波数の計算には問題のないものの、内部ダクト側の共振周波数のグラフがずたずたで、どこに共振周波数があるのか選定不能でした。グラフ が綺麗になるよう、内部ダクトを絞ることにしていましたが、内部ダクトをそのままにして実際に音を聞いたところ問題がないばかりか、むしろ好ましい音でし た。このため、内部ダクトはそのままにして外部ダクトだけを改造したものです。こうした事情をいきなり説明しても混乱するだけなので、本文からは省略して います。
アメリカ人等は特に計算好きなので、固有値計算プログラムを提供してくれる人が現れるかもしれません。しかし、次数が高くなるほど計算誤差が増えるので、 結局は簡易計算のほうが実用的で十分なのかもしれません。ということで、簡易計算シートを公開したものです。

MCAP-CR型は発表してから1年ちょっとしか経ていませんが、理論的に開発したこともあり、完成に近付いてきているようです。開発への近道は、理論的に攻め ることであると、つくづく感じます。


2009/03/12

低音再生限界

低音の再生限界をどの周波数に持ってくるかを決めるのは厄介です。

以 前は、20Hzまで頑張ろうと思っていましたが、最近はそこまでしないほうが良いのではないかと思うようになりました。正直云って未だ20Hzの再生に本 格的に取組んだことはありません。お気軽に出そうと思っても出ないのです。勿論低いレベルでは出ていますが、高調波のレベルのほうが高いのでは再生してい るうちに入りません。

ブログハイエンドスピーカーのkenbo-さんによると、25Hzを再生すると聞いている人の気分が悪くなるのだそ うです。20Hzまでやったことはあるものの、聞いている人が、圧迫されるように感じ、評判が悪かったということでした。20Hzは、もう音とは云えない 世界なのだそうです。そこで、kenbo-さんは、もっと高い周波数で切ってしまっているのだそうですが、暖かくなったら、お邪魔して20Hzを聞かせて いただこうと思います。

実際には、高調波を聞いて20Hzを再生していると勘違いしている人もかなり居るそうです。しかし、そういう人に指摘しても喧嘩になるからしないほうが良 いと、kenbo−さんからアドバイスを頂きました。

先 週末にFeastrexユーザーになる方が来られて、私のTR130c/c2を聞いていかれました。ご自身は、10cmドライバーを強化してバックロード ホーンで20Hz位まで再生されているのだということで、27Hzのピアノの音が入っているというCDを持ってきて頂きました。音量を上げていないせいも あるのかもしれませんが、私のシステムでは、27Hzが分りませんでした。再生できるシステムだと、音というより風のように感じるのだそうです。

私 がWaveGeneで作成したサイン波のCDでは、低域チェック用の周波数が、32Hzの下は、24Hzとなっています。100Hz以下を聞いてみると、 40Hzよりも32Hzのほうが高いレベルで再生されましたが、24Hzは盛大な空振りでした。見た目で空振りが確認できたくらいなので、 TR130c/c2型の限界は、32Hz以下24Hz超というどこかなのでしょうが、MCAP-CR型はバスレフと同じ欠点があり、最低共振周波数以下はすっぱ り切れてしまいます。

20Hzを再生する価値がどれだけあるのか、考えてみました。
先のkenbo-さんは、低音再生限界は 40Hzも再生すれば充分だろうということでしたが、私は、32Hzまで再生すべきだろうと考えます。その理由は、自分のTR130b,c,d箱の再生限 界がその付近だということもあるのですが、そうではなく、オーケストラの大太鼓が、32-38Hz位にチューニングされていること、及びオルガンの低音 が、32Hz位まで再生されれば、雰囲気が充分伝わるということです。40Hzまでではちょっと寂しくなる場合が多いのではないかと思います。

い ずれは20Hzにも挑戦してみたいのですが、MCAP-CR型で20Hzを目指すためには、もう1つか2つ空気室を増やすことが必要になりそうです。そうしなけ れば、低音のレベルが中弛みになりそうです。そこまでやると、大きくなりそうなので、挑戦するのはもう少し先になりそうです。

因みに、上記のFeastrexのユーザーになる方のご感想では、私のMCAP-CR型の音は想像通りだったそうです。音造りは、ベテランにはすぐに見抜かれて しまいます。


2009/03/08

Feastrex愛好者の集い

別 にそのような名称の会合があるわけではないのですが、昨日愛好者であるBさんと、Nさんの2名が我家を訪問されました。Feastrex自体、日本のオー ディオメーカーとして認知されている訳ではないため、ユーザーの数は極小と思います。BさんとNさんは、これからユーザーになろうといういわばユーザー予 備軍の方々です。Nさんは予約した製品が昨日丁度出来上がったところだそうです。Bさんは、ようやく購入できそうなところということでした。
Feastrex は、ここでリンクにも紹介している社長さんのブログがありますが、そのブログで気になる書込みがあるとメールなどで話題になります。小さなコミュニティな ので、オーディオマニアには見向いてもらえませんが、音楽家とか音楽愛好者にはFeastrex社の製品は評判が良いのだそうです。昨日もある話題を中心 に3名であれこれと議論しました。詳細は書きませんが、皆、Feastrexの事業が軌道に乗るようサポートしています。自分で何百万円も投資して大ユー ザーになるという人は稀ですが、ここに集まる人は、世間に認知されるよう技術的、広報的な支援を惜しみません。こういうところは、他のオーディオメーカー とは違う同社の強みになっています。

Feastrexのスピーカーユニットは、聞くと病みつきになる音を出します。また、私のような自作 派にとっては、意図した通りに箱を鳴らしてくれるので、とても有難いのです。箱を100%鳴らし切るスピーカーユニットと云ったら良いのでしょうか。上手 に説明できませんが、何故かそのように感じられます。Feastrexの音は、リンクで紹介している『ブログハイエンドスピーカー』のkenbo-さんに よると、『普通の音』、『癖の無い音』、『嫌味の無い音』、『自然な音』だそうです。
私の印象は、『音楽を聴きたくなる音』、『スピーカーを主張 しない音』、そしてkenbo-さんと同様、『癖の無い音』、『自然な音』です。それなのに、オーケストラの底力を感じさせる音を出します。しかし、オー ディオマニア向けの音ではないのです。オーディオマニア向けと違って使いこなしの難しさがあまりありません。勿論、低音域を拡げるためにはしかるべき箱が 必要ですが、適当な箱に入れてもしっかり鳴ってくれます。

Feastrexは、元々オーディオメーカーではないので、決まりごとに捕らわ れることがありません。考えた通り徹底的にやってみて出来たのがこのような製品です。オーディオの常識に捕らわれないという態度は、私の態度とも共通して いるところがあります。そんなこともあるのでしょうか、Feastrexのスピーカーユニットは、MCAP-CR型の箱を存分に鳴らしてくれます。音がいまひと つなので、今迄あまり聞いていなかったCDの音楽も鳴らしてくれるようになりました。オーディオマニア、サウンドマニアとしての自分を別な方向に引っ張っ てきています。

別に私はIBI社に便宜供与を受けている訳ではありません。それは、上記のお二方も同様と思います。宣伝しても見返りはあ りません。勿論、メーカーとしてのお付き合いはあり、それは、他のメーカーと比べると比較にならないくらい深いものです。自分の意見や技術を聞いてもらえ るので、それは便宜供与の一部なのかもしれません。でも、自分と一緒に発展してゆくというのはとても興味深いものです。

昨日、お二人をお 迎えするために、スピーカーを狭い自室から居間に移して聞いていたら音が気になり、吸音材を変えました。以前は、大鋸屑をストッキングに詰めたものだけで したが、これを、100円ショップで購入したスポンジと掃除用のスポンジのような薄いシートに交換したら余分な音がとれて好ましい音になりました。お客様 が来られてからも30分も作業をしてしまいました。メーカー品でないスピーカーは、多かれ少なかれこうした調整が必要になります。面倒ですが、音楽を楽し むためにはこれも楽しみの一部なのでしょうか。

何週間か先になりますが、TR130d型の箱との組合せがFeastrexの試聴室で聞けるようになるかもしれません。好奇心旺盛な人たち(といっても2 名ですが)なので、しっかり遊んで頂けると思います。自分はとても楽しみです。

2009/03/04

歪について

某社のブログで、歪の議論が白熱しています。歪は、理解したようでなかなか理解できないものです。

歪 にはいろいろありますが、最も分りやすい歪は高調波歪と呼ばれるものです。高調波歪は、元信号と再生音が一致しないことによる高調波が発生することです。 Fourierの法則では、全ての信号は、正弦波の重ね合わせで表現されることになっています。例えば単純な50Hzの信号を再生したときに、再生音が歪 んでいると50Hz以外の成分(高調波)が混じります。この高調波の大小で歪の大きさが評価されます。このような解析をTHD(Total Harmonic Distortion)分析のように呼んでいます。
過大入力による歪(クリップ)の場合は、正弦波の頭を切落としたような形に なります。これも、Fourierの法則通り、正弦波の重ね合わせで表すことができますが、このような歪の場合は、大抵聞くに堪えないほどの大きな歪にな ります。また、このような歪は、装置を壊すほどのダメージを与えることにもなります。しかし、過大入力による歪は、正しく使用すれば発生しないので、問題 になるものではありません。

歪ゼロということは、まずあり得ないので、一般的には必ず歪を伴います。高調波歪の場合は、評価が特に厄介で す。適当な高調波歪があると、高域成分が付加された倍音のように作用するので、レンジが拡がって音が良くなったように聞こえる場合があります。高調波成分 が、通常あまり聞こえない高音の場合(例えば10kHz以上)には、歪としては認識されにくく、『いい音』として認知される場合があります。

ま た、振動系の質が悪い場合には、元信号に高調波歪があっても、歪の角がとれてまろやかな音になることがあります。例えば、そこそこのオーディオ装置では歪 が気になるのに、カーステレオでは全く歪が気にならないというようなことがあります。ですので、元信号に歪があったときには、歪を再生するのが正しく、ま ろやかな音を再生するのは間違っているはずなのですが、そう評価されていないことも実例としてはあるものではないかと思います。本当は歪を再生するのも再 生装置の能力のはずです。

しかし、振動系に歪がある場合は、また別の対策が必要になります。装置全体のなかで、スピーカー再生装置は、最 も歪が多いので、この部分は、特に対策が必要です。また、単に歪ということではなく、どのような歪かを検証することが大切です。音楽信号に歪が感じられる 場合には、ソースをFFT分析して、周波数成分を把握します。そして、その部分の再生音をFFT分析して、周波数成分の違いを確認します。音を大きくした り、小さくしたりして、周波数成分の違いが比例するか、変わらないかを観察することも必要です。その結果によって対策が違ってくるからです。

また、本来の歪とは別ですが、振動板に関係ない部分の固有振動によるビビリ音のようなものもあり、こうした場合には、ビビリ音の周波数成分を観察すること で、原因の特定がしやすくなります。

歪については、分っているような分っていないような永遠のテーマなのだと思います。

2009/02/28

励磁型ドライバー用MCAPエンクロージャーTR130c完成

Feastrex Nf5 Ex用に特別に設計したエンクロージャーTR130c(片側はTR130c2型)が完成しました。

励 磁型のローエンドモデルであるNf5Ex型は、発熱が多めです。励磁コイルの抵抗値は、常温で約11Ωあります。これに14Vの励磁電圧を掛けた状態で は、約18Wの発熱をすることになります。この18Wというのは、小さめの白熱電球に相当しますので、これだけ熱を持つと、放熱しなければなりません。励 磁電圧は10Vでも使用でき、その場合は、発熱が約9Wとなりますが、それでも放熱を考慮したほうが良いに決まっています。
Feastrexの上級機であるD5e型は、コイルの巻数が多いらしく、もっと低い電圧でも使用できるようなので、放熱量は小さくなります。しかし、Nf 型では、上記のように発熱が多いので、何らかの対策が必要です。

よって、今回は、放熱を考慮したデザインになっています。

空気室は、片側につき全部で4つ、上から2つ目が主空気室で、その他は副空気室です。熱は、主空気室の上側のダクトを通って最上階の第2副空気室に逃げま す。そして第2副空気室の上側のダクトを通って外に放熱するようになっています。
最 上階の第2副空気室の上側には右の図のようにダクトが付いています。今までは、空気室の床面にダクトを付けていましたが、今回は初の試みとして、天井にダ クトを付けています。これにより、放熱が多少効率的になったと思います。

しかし、最上階のダクトが床面に付いていたTR130d型でも、放熱の問題は無かったので、気休め程度の差かもしれません。いずれにしても、発熱の多い励 磁型では、このような工夫をしなければ、板が割れたり、発熱によってコイルが焼損するということにもなりかねません。
MCAP-CR型は、励磁型のためのエンクロージャーなのかもしれません。

TR130c (TR130c2)型の音は、TR130d型と同様の傾向ですが、TR130d型と比べると多少空気室が小さめなので、Nf5Ex型にはちょうどいい感じ です。TR130d型は、c型よりも振動板への負荷が大きいので、NfよりもD5e型のほうがマッチングが良いと想像します。

いつものよ うに、パイプオルガンのCDを聴くと、32Hzは中音と同等以上に出ているように聞こえます。正弦波を聞くと、32Hz以上は同じような音の大きさに聞こ えましたが、24Hz以下は盛大に空振りしている感じでした。これは設計通りなのでしょうがありません。24Hz以下も再生しようと思えば、もう少し大き く作り、また、中低域の落込みがないよう、副空気室を増やすなどの対策が必要になります。そこまで大きなエンクロージャーを作るのもどうかと思い、ここま でにしています。

因みに、20Hzで振動板を駆動したときの高調波歪を聞いて、20Hzを再生していると勘違いしている人は意外に多く、 自称20Hzを再生すると云っても実は、40Hzも怪しいなんていうこともあるようです。30Hzを聞くと20Hzがどれだけ恐ろしい音か想像できるので すが。

今回は、アクリルラッカーではなく、ウレタン二ス仕上にしてみました。素人の仕上ですが、さほど悪い訳でもなく暫くはこのまま使ってみることにします。


2009/02/25

TSパラメータの勉強

大山さんのページで 紹介されているオーディオ関連の書籍から2冊を購入してみました。購入したのは今年の初めで、下記の2冊です。

新井 悠一 『高品位スピーカーシステム』 誠文堂新光社
田中 和成 『位相反転型エンクロージャの設計法』 誠文堂新光社

前者は大山さん特選の書なので期待しましたが内容は、ソフトウェアを使用したシミュレーションが中心で、自分の目的からは外れていましたので、目を通した だけでした。

後者は、普段使用していないTSパラメータなどの説明があったので少し興味を持って読んでいるところです。しかし...
読んでみたところ、自分にとって大きな問題をすぐに発見しました。私が問題点と感じたのは以下の点です。
(1) 著者の紹介がない!
 著者がどのような経歴で研究してきたのか読み手にとって重要な情報です。しかし、それが無い...
(2) 用語が英語で出ていない!
 技術的な情報を読み解くためには、日本語の情報だけでは不足です。足りない部分は、英文でも調べるしかありません。それが無いとは...

それでも、今まではこのようなちゃんとした本が見つからなかったので、頑張って読み解こうとしているところです。

私 が一番知りたかったのは、"Q"というパラメータです。これは。『共振峰先鋭度』という言葉で表現されていますが、物理的な意味が殆ど説明されていませ ん。このパラメータは、多くの人が当然のように使っているものなのですが、今まで、調べてみてもどうも内容が理解できませんでした。この本を読んでもやは り理解できないのです。この本では、インピーダンスを測定するときのミリボルトの読み値がVnになったときの周波数f1とf2を使用して計算する計算式が 出ています。しかし、Vnの物理的な意味が説明されていないので、これを使って定義されるQというパラメータの意味が分らないのです。

も う少し先を読んでいくと、自分が物理学の知識から手探りでやってきたのとほぼ同様の内容が専門的に纏められています。しかし、上記の部分が分らないまま読 んでも納得がいきません。それにその後の部分も物理的意味の説明がほとんどないのです。例えば共振周波数を計算するときには、音速を使用した共振周波数の 式が出ていますが、式の説明はありません。私は、物理学の本を手がかりにして、状態方程式から導いた式を使用しており、内容は同じなのですが、求める過程 が分らなければ単なる公式になってしまいます。私は、実験結果から、等温条件を使用したほうが実際に近いと書きましたが、この本では、説明も無く断熱条件 の式を使用しながら、等温での説明をしているところなど理解に苦しみます。結局は自分で考えるしかないのでしょうか。

この本を読んで強く感じたのは、専門用語を丸暗記してもクリエイティブな発想は出ないだろうということです。発想するには、基礎学習が最も有効なのだと改 めて感じました。

一応、TSパラメータが設計に使用されるには学問的な裏付けがあるらしいことは分ったのですが、理解できないのではどうしようもありません。
この先どうやって勉強しようか、困ったなあ...

2009/02/22

ゆったりとした時の流れ

世 の中の進歩は速いのにオーディオだけはどうしてこのように時の流れが遅いのだろうか。

ここ20年位の間、オーディオ 装置に何か進歩はあったのでしょうか。ここ30年位の間で進歩と呼べるものは、CDが登場したこと位でしょうか。そのCDにしたって、未だに、LPを超え ていないと考える人も居るくらいです。

自分の物心が付いた頃から、オーディオ業界では新製品が出るたびに、以前の何倍も良くなった、と大騒ぎし ていました。しかし、最近は、こういうことを聞いても『ああ、そう』位にしか思わなくなりました。本当に何倍も良くなったということが繰り返されてきた ならば、控えめに見ても、20年前の100倍位は良くなっているはずです。しかし、実際は、20年前のオーディオ製品を未だに追い越すことができないでい ると思います。 だからこそ、数十年前の高級機を大切に使っている人がいるので、そうでなければビンテージ製品なんて成り立たないのです。

13cmMCAP 型の新作TR130c 型は、あとは仕上を待つばかりです。組立を終え、目止めを済ませたところです。今日はここまでで終了です。来週は、これに仕上を施して、完成の予定です。 片側は組立を間違えましたが、結局は、オーソドックスなMCAP-CR型になるように修正しました。当初の設計通りのほうが、TR130cに対し、間違ったもの はTR130c2と呼ぶことにします。c型とc2型とでは、空気室の容積の配分は違いますが、ダクトは同等になっており、共振周波数が多 少違う程度です。オリジナルc型が良いのか、間違いを修正したほうのc2型が良いのかは分りません。結果はどちらも大差 ないのかもしれません。

TR130シ リーズは、既にaから始まって、dまでになっています。しかし、dがベストとかcがベストということはありません。aだって素晴らしいところ があるし、bにいたっては、欠点らしい欠点があるわけではありません。改良のつもりでいろいろやってみても結局はオリジナルと比べて良くなっているのかど う か分らないものです。

そもそも、MCAP-CR型なんて40年前に完成されていたって何の不思議も無いものです。むしろ、21世紀になって、やっと出てきたこと自体が不自然です。 メーカーやオーディオの専門家は一体何をしてきたのでしょうか。何十年も進歩しないオーディオって一体何だろう?

TR130c型及び TR130c2型の仕上前の状態



2009/02/15

やっちゃった!

昨 日、MAKIZOUクラフトから待っていたTR130c型用の板が届きました。
あまり影響の無いマイナーな間違いがありましたが、さすがMAKIZOUさん、早速フォローの電話を頂きました。間違いの有無よりも、何かあったときの フォローのほうが顧客満足度を上げます。そういうものだと私も思いました。

そ れはそれとして、調子よく組立ていたら、最後に近いところで自分の組立ミスに気付きました。それが右の写真です。どこが違うのかは、設計した本人でさえ気 付かないのですから、ちょっと見ただけでは分りませんが、間違っているのは右側です。主空気室と第1副空気室が繋がっていません。代わりに、第3副空気室 と第1副空気室が繋がってしまいました。また。一番上の第2副空気室以外、容量が設計と違っています。自分で定義したMCAP-CR型の要件は一応満たしている ものの、どのような動作をするのか検討が付きません。

しかし、面白いので、そのまま使ってみることにしました。とりあえず片方だけは設計通にできている訳ですし、中高域の差が無ければとりあえずそのまま使え そうだし、ひょっとしてもっと良い動作にならないとも云えません。

完成は2週間位先になりますが、たまにはこういうミスもしょうがありませんか...

さて、本日は、リンクで紹介している、ブロ グハイエンド自作スピーカーのkenbo -さんがいらっしゃいました。自作派の方が来られるのは初めてです。Feastrexの励磁型ドライバーを付けたTR130d型を興味深そうに聞いていか れました。どのようなコメントを書かれるでしょうか。自作派にとって、ン十万円のドライバーを使った自作システムは興味あるところだと思います。ン十万円 かけてくないから自作する、その代わり手間暇は惜しまないというのが自作の多数派でしょうから。
その後、kenbo-さんにご案内いただいて、ミューズの方舟の会合を初めて訪問しました。皆さん熱気に溢れていて、発言するのが大変でしたが、今後、時 々訪問したいと思います。
kenbo-さん、ミューズの方舟のみなさん、どうも有難う御座いました。

2009/02/14

TR130dダクト仕上


FeastrexのTさんから、ダクトの出入口にはテーパーをつけた方が音が良くなるとのアドバイスを頂きましたので、今日はダクトの加工をしてみまし た。

ダクトは左側の写真のように、木製のアングルになっています。長さは計算で決めてあります。

Tさんのアドバイス通りにすると、相当長さが短くなってしまい、ローエンドが上がってしまう可能性が捨て切れませんでしたが、とりあえずやってみることに しました。

空気の出入り口にはおよそ、6mmのテーパーを付け、ずっと以前に購入して使いきれていなかった、水性のウレタン塗料を塗りました。

作業は思っていたよりも簡単でした。加工面は汚いですが、素人作業なのでしょうがありません。

これらのアングルを、TR130dの裏側から差し込んで接着しました。

これで、大気開放側ダクトの縮小完了です。

以前より良くなったか、と問われると良く分りませんが、低域の量感は変わらないので悪影響は無かったようです。良くなったと云えば良くなったようにも聞こ えるので、きっと効果があったのでしょう。

これから作るTR130c型も同じように細工することにしました。

先程、TR130c用の板が届きました。18mm厚のスーパーシナアピトン合板2枚は、さすがに重かったです。

これから忙しくなります。

2009/02/11

TR130d半完成


Feastrexドライバーのための新作TR130cを製作する前に、20cm用のTR200aを13cm用に改造してみました。

改造とは云っても、改造点は下記の通りです。

  1. Feastrexドライバーが取り付くサブバッフルを付ける
  2. ダクトの面積と長さを13cmドライバー用に変更する
  3. Feastrex用に、破損防止のガードを付ける
  4. スーパーツィータFT96Hは切り離す
ダクトの改造は完全には終了していませんが、大気開放のダクトには、更にダクトを詰め込んでサイズを小さくしています。

スーパーツィータは、取り外して何か付けようかと思いましたが、格好の良いものが思いつかなかったので、配線を切っただけで、飾りとしてそのまま付けてあ ります。

Feastrexの5インチドライバーは、取付穴が6つ、ピッチ径が151.5mmとなっており、丁度良いものがありません。このため、ファンガードの大 き目のものから取付用の部分を切り取り、ただの網にしました。

ガードを浮かせるために、プラスチックのスペーサーを付けています。

取付用には六角穴付ボルトを使用したかったのですが、東急ハンズに売っていなかったので、やむを得ず六角ボルトにしました。また、丁度良い長さのものは極 端に高かったので、少し短めのものになっています。危険なことはないのでこれでも良いとは思いますが。

写真では良く分りませんが、鉄仮面のようで意外に格好悪くありません。

吸音材は、変更せずにそのまま使用しました。

大き目のスポンジが3つと、鉋の削り屑をストッキングに詰めたものが吸音材です。これらの働きが良いのかどうかは分りませんが、安いし、危険ではないの で、特に考えずにそのままにしました。

上の線は、スーパーツィータ用のもので、外すのが面倒なので、線を切断しただけです。

残作業は、ダクトをしっかりと取付けることだけですが、暫くはこのまま聞いていても良さそうです。

久しぶりに聞いたFeastrex Nf 5 Exciterの音ですが、驚きのあまり仰け反りました。ここまで鳴るならTR130cを作る必要は無いようです。しかし、板は既に注文済みで、今週には 届くので、計画は決行します。

い つも聞くオルガンを聞くと33Hzは、かなり強力に再生されています。24Hzと21Hzの入ったバッハのオルガンでは、今迄あまり意識しなかった低音が 再生されています。恐らく24Hzの音なのでしょう。この音は、TR130b型に同じドライバーを付けたときにも感じましたが、容積の増加によって更に明 確になった感じがします。

オルガンの再生中に、箱の後ろ側のダクトに新しいダクトを詰め込んでいたら、ダクトから風が吹いていました。ダクトに手をかざすと風のようでしたが、実は オルガン再生音の圧力波でした。

Feastrexの中高音は、さすがに素晴らしく、最近聞いていたFostexとは、ぐんと差が付きます。もうFostexに戻ることは出来ません。

Feastrexを使用して思うのは、箱を最大限生かしているように感じることです。今までは、ドライバーを活かすために箱を作ると思っていましたが、 Feastrexのドライバーを付けると、箱が最大限に活かされて鳴っているように感じます。

最近、Feastrexドライバーのスペックが一部公表されましたが、スペックだけでは想像の付かない鳴り方です。

こういう音を聴いてしまうと...

2009/02/08

Feastrex コイズミ無線から販売開始

Feastrexが秋葉原のコイズミ無線から販売を開始しました。Feastrex社長さんのブログで見てから実際にコイズミ無線を尋ねたところ本当に 売っていました。値段表もありましたので、民生用の本格販売開始なのでしょう。
これからは、その名前も広く知れ渡ることになりますが、このような超高級品の場合は販売促進効果どうなのでしょうか?自作派は、私も含めてコスト重視派が 多いように思います。さて、超高級ドライバーが、DIYオーディオに切込んでいけるかどうか。



TR130d

第3 作目のTR130cも完成していないのに気が早いですが、もう第4作目の板を注文してしまいました。とは云っても、TR130d型は、TR200a型の改 造です。Feastrex D5e用にサブバッフルを付け、ダクトサイズを小さくします。たったそれだけですが、板代は加工費と送料を合わせて東急ハンズで7千円を超えました。 TR130c型の板代が、加工費と送料を合わせて、MAKIZOUクラフトで4万円をちょっと超える位なので、TR130d型は結構高価な気がします。

2作同時に製作というのは初めてですが、楽しみです。

と ころで、何故TR200aを諦めたかというと、FostexのFE206Σの音がどうしても気に入らないためです。最初はいい音だと思っていましたが、 Feastrexは元より、欧州の5インチドライバーの音と比べてもどうしても好みに合いません。TR130の新型が完成するまでの間は、Cantare 5FR MKUを使用したTR130a型で楽しんでいます。

2009/02/02

アンプの導入

ハイエンドオーディオショーの時に気になっていたIOTA Systemsのパワーアンプキットを買ってきて作ってみました。麻布オーディオで販売されているもので、型式は、IOTA-LM3886と いうようです。4オーム負荷で、最大68Wのモノラルアンプ2つで、電源は、+/-35Vが標準ということです。電源は、2008/12/21のところに 写真が出ている自家製のACアダプタ(+/-36V)が使用できるので、1日で完成しました。


外見はなんの変哲も無い、ただの箱です。前面には入力のボリウムだけを付けました。電源の入り切りはACアダプター側で行うので、本体にはスイッチもラン プも何もありません。

スピーカーの上に置いたのは撮影のためで、今は置き場所が無いので、普段はこういうところに置いておいて、使用するときは床の上に直置きにします。

背面には、入力用のRCA端子、プラスマイナス電源用にヒロセの3Pのレセプタクルを使用しました。25mm径のもので、10Aまで使用できるものです。 これは大きすぎて、穴開け加工が大変でした。結局内側のバリは取ることができませんでした。

スピーカー端子は、同じくヒロセのレセプタクルで2Pのものとしました。一般性はありませんが、どうせ自分しか使わないのでこのようにしてみました。

内部は、この程度のものです。放熱器は、パソコンのCPU用で、ジャンク品です。Super7時代のものだと思います。当時としては破格のサイズだったと 思います。

IOTAの基板は、放熱面が基板より内側にあるので、上手に付きません。しかし、軽かったので、逆さにし、固定せずにそのまま付けました。

IOTAの基板は小さいので便利ですが、穴が小さすぎてコードが入りません。配線用の穴は、針が通る程度しかありません。上記の配置の問題も含めて改善し て欲しいと思います。

音を鳴らしてみて、最初は、ゲインの低さにびっくりしました。マニュアルを読むと21dBと書いてあります。何か計算が違っているような気もしますが、電 気は得意でないのでこれ以上は追求しません。


ゲインは、マニュアルの値よりもかなり低いのではないかと思います。FE206Σを使用したTR200aを聞いてみると、P-350で使用している普段の ボリウムが9時前なのに対し、12時過ぎまで上げないと同程度の音量になりません。低すぎるような気がします。また、プリアンプを使用せずにREC OUTから直に繋ぐと入力のボリウムを最大にしても、十分な音量になりません。どこか違っているような気がします。

音のほうは、2009/12/21のところで紹介している、ユニエル電子のPA-036のほうが好きですが、なかなかの音です。中高級のパワーアンプより は質が良いのではないでしょうか。アンプ基板2,500円×2であることを考えるとC/Pはかなり良いと思います。
PA-036はゲインが31dBとスペック上は10dBしか違わないのですが、実際はもっと大きそうです。このIOTAのアンプも、プリアンプなしで使用 しようと考えていたので、後でゲインを上げる改造をしなければなりません。

何はともあれ、しばらくは遊べそうです。


読者の方からのお便り

最近ぽつぽつとお便りを頂くようになりました。
嬉しかったのは、QU080bを実際に作った というお便りでした。長岡先生の著書などを読んで検討した結果、サイズが合わないので、MCAP-CR型に興味を持たれ、実際に製作してみたところ、低音の出方 にびっくりされたとのことです。わざわざ写真付でメールを下さいました。気に入って頂いて大変光栄です。

MCAP方が気になる方がおられましたら、是非とも一度製作してみてください。或いは、メールを頂ければ、お聞かせできるかもしれません。

2009/01/26

FEASTREX

少 し前の日記に書きました通り、昨年末にとうとうFeastrex Nf5 Exciterというモデルを購入しました。このような高級品を購入するのは半世紀近い生涯で初めてのことです。元々高級品には興味が無く、最低のコスト で最高の音を出したいという野望を持ってシステムの開発を進めてきました。しかし、このスピーカーユニットを使用してみて、自分の野望がもろくも崩れ去り ました。最初は、TR130b型の箱に入れて鳴らしていましたが、この音を聴いてみて、やはりある程度のコストが必要なんだと思い知らされました。
ス ピーカーユニットメーカーで世界的に有名なのはFostexで、長岡先生やそのファンを初めとして多くの人がFostexの音に魅了され、独自のシステム を構築してきました。私もそのうちの一人です。最近は、Tangbandやヨーロッパメーカーのスピーカーユニットに浮気をしていましたが、Fostex は、それでも抜群の音を聞かせるスピーカーユニットだと思っていました。Feastrexを実際に導入するまでは...

Feastrex を使ってしまうと、もうFostexには戻りにくくなります。音の差を言葉で説明するのは難しいのですが、Feastrexの音は、遠くまで届くような突 き抜ける音です。それでいて歪感が全く無く、音楽を音楽らしく奏でます。決してサウンドマニア向けの音ではないと思います。そして、MCAP-CR型と組合せた 音は、自分にとって生涯最高の音になりました。歪感が無く、ノイズもありません。それでいて、低音から高音まで何のストレスもなくすっと伸びてきます。 TR130b型と組合せた測定はしていないのですが、W5-1611SAでは不明確だった30Hz以下の音も分離して聞かせるようになりました。

しかし、TR130b型は、お嫁入りしてしまい寂しいことこのうえありません。そしてとうとうTR130c 型を 作ることにしました。音楽を楽しみたくて箱を設計するのは、意外なことに初めてかもしれません。以前はサウンドを楽しみたいと思っていました。 Feastrexにはやられました。今後は他のスピーカーユニットを殆ど買わなくなりそうです。Feastrexについては、社長さんのブログに詳しく出ています。

TR130c型の完成は1ヶ月位先になりそうです。

2009/01/24

新作TR130c

TR130b型エンクロージャーがMさんのところへお嫁入りし、その箱で鳴らしていたFeastrex Nf5Exの音を聴くことができなくなってしまいました。
今 は、Fostex FE206Σ+FT96Hを付けたTR200a型で音楽を聴いています。下記1/12のところで書いた通り、TR200aのシステムは確かにいい音です。 しかし、一度Feastrexを聴いてしまうと、なかなかFostexには戻り辛くなるのが弱いところです。
TR200a型は、音のバランスも良 いと思うし、音楽を生き生きと鳴らすことができます。音楽の骨格となる中高域の質も相当に高いと思います。しかし、Feastrexの音は、これを更に上 回ります。音のバランスがどうだとか、低域が厚いとかそのようなことは超越した質の良さがあり、市販のシステムだったら一千万円クラスのシステムに使用さ れる位の質のスピーカーユニットです。中高域の質は、とてもフルレンジとは思えないものです。これにMCAP-CR型のTR130b箱を組合せ、低域を30Hz まで延ばした音は、今までに自分が体験した音の中では最高と思える程でした。このシステムがあまりに良く出来ていたので、改作のアイディアが中々出てきま せんでした。いくら気に入ったとは云っても同じでは面白くありません。それが、自作マニアの良いところでもあり、悪いところでもあります。

次 はどのような構造にするか、いろいろと考えてみました。最初に考えたのは、折角新しく作るのだから、空気室を更にひとつ増やして、QU130a型とするこ とでした。しかし、サイズがどうしても大きくなるし、板もきりのいい数量になりません。最終的には、TR130bをベースにして、もう少しゆとりのあるサ イズのTR130c型としました。TR130b型は、ミューズの方舟の会場まで運べるサイズとしましたが、今回はそのような制約が無いので、初心に戻って 考えました。今回の新作のポイントは以下の通りです。
  • 設置面積を増やさずに、高さを大きく取り、空気室容量を拡げる。
  • 励磁型の放熱を考慮した構造とする。
  • 最低共振周波数を27Hzとする。
  • 板は、1本につきサブロク1枚とする。
空 気室容量を広げるのは、低域の音圧を稼ぐためです。また、最低共振周波数を27Hzとしたのは、Feastrexユーザーでもある漆の名工Tさんの共鳴管 が27Hzを再生したという評判を聞いているからです。20Hzに挑戦することも出来ますが、あまり巨大になっては面白くないので、TR130bの最低共 振周波数30Hzからほんの少し下げるだけにしました。実際にTR130bでも十分な感じです。後は図面を最終チェックして見積をとってから、発注す るだけです。板材は、製作を楽にするため、18mm厚のスーパーシナアピトン合板にすることにしました。
今回の変更が改良となるか、大差なしとなるか、改悪となるか出来てからの楽しみです。

TR130cのドラフトです。

2009/01/17

Feastrex D5e Type U - MCAP TR130bのお嫁入り

先 週 MCAP箱に取付かなかったD5e TypeUのケーブル直出し改造が終了し、今朝、Feastrexの社長さんと安曇野のKさんのお二人が態々私の自宅まで届けて下さいました。お二人は改 造したドライバーを私のところに置いて、秋葉原に買出し後、TR130b箱に付けたD5e TypeUをピックアップし、一緒にMさん宅まで届けて下さいました。Feastrexは、Fostexのような一般の民生品とは違い、むしろ業務用のよ うな次元の製品を販売していますが、こういうところは、さすがに心配りが行き届いており、まさに、顔の見えるメーカーです。このような気配りが製品の価値 を高めています。

さて、Mさん宅にお伺いし、最初は、Mさんの現用システムを聞かせて頂きました、励磁型のウェスタンのシステムのマルチ アンプ3ウェイで、脳を破壊するかのような鮮明な高音を聞かせています。まさにハイエンドと云うに相応しいもので、このような音は滅多に聴けるものではな いと思いました。質の素晴らしいツィーターがちょっとキャラクターを強めており、ホールのような部屋で聞くにはこれ以上望めない音でした。このような凄い 音を聴きながら、男3人があーでもないこーでもないと勝手なことを云うものですからMさんも大変だったと思います。

いろいろといじくってから次に、D5e TypeU+MCAP TR130bの試聴になりました。
最 初に、Vivaldiを聞いたとき、まだ少し音が硬い、という印象を受けましたが、概ね大丈夫そうだと感じました。それから、曲を変え、設定を変え、アン プの電源を変え目まぐるしく変更しながら聞いていきましたが、どうも高音のある音域が歪みます。しかし、これは改造後のほぼ新品状態なので、時間が経てば 歪がなくなります、という社長さんの声に勇気付けながら聞いているとだんだん音が変わってきました。最高の状態になるには1年ほどかかるそうですが、5時 間程でこれだったら問題がないというレベルまで変わってきました。Mさんの育て上げたシステムを追い越すのは未だ先になるとは思いますが、高音のキレは既 に同等に近いレベルになっているし、低音は、壁バッフルの46cmに勝っていると思います。Mさんもさぞかしほっとしたことだと思います。それ以上に、社 長さんと私とはほっとしました。社長さんは、途中からは、『ウェスタンに勝ってる!勝ってる!』と余裕でした。Feastrexドライバーと MCAPとがこれほどの適合を見せるとは思いませんでした。

途中、励磁電源の電圧を下げたとき、音が好ましい方向に変化しました。私は想 像通りの結果でしたが、社長さんは想定していた範囲を超えた設定に驚きを隠せなかったようです。推奨電圧14Vに対し、最終的には5.4Vまで下げたとこ ろきつさがとれ、柔らかく、それでいて十分キレの良い音になりました。熱くなるはずのフレームも冷たいままで、これだったら共振周波数の計算がさほど狂わ ないかもしれません。最終的にはもっと電圧を下げられると思います。

今日は、とうとうシステムが完成し、最後は皆笑顔で終了となりました。Mさんの音が落ち着いたらまた訪問して、Mさんの部屋での特性を測ることになってい ます。益々音が良くなり、ウェスタンにとって代われますように!

2009/01/12

Feastrex D5e TypeU

一昨日、TR130b箱用にFeastrexのD5e TypeU(新車が買える位の超々高級品)を持ってMさんが来られました。最初に、同社ローエンド機種(それでも年式の新しい中古の軽自動車が買える位) であるNf5Ex を聴き、低音の出方や音の傾向を確認し、次に、MさんのD5eに交換しようとしました。取付穴は、元々D5e用にしてあったので、何の問題も無く取り付く はずでしたが、励磁用配線を接続してからではどうしても穴に入りませんでした。D5eは、バッフル面に取付けて、裏から配線する仕様になっているというこ とが分りまし た。バッフル前面から取付ける仕様で、裏側から配線するというのも妙ですが、コネクタを介さずに励磁配線を直出しするオプションもあるということ だったので、純正改造することになりました。何も無ければ、今週土曜に改造完了となります。


左からD5e TypeU、Nf5Ex

左からD5e TypeU、Nf5Ex

D5e TypeUは、フェーズプラグが漆塗りになっていますが、Nf5Exはメッキ仕様です。物理的には差がないように思いますが、音は違うのだそうです。正面 から見ると他に差はありませんが、磁気回路は、大きさが全く違います。電磁石部分の材質も違うとのことです。これらの違いは、改造が終わってからのお楽し みです。

ローエンド機種のNF5Exを聞いて、Mさんは、確かな手応えを掴まれたようでした。リファレンスとして、SiemensのEurophonと聞き比 べたところ、Mさんは、好みの差の範疇に入るが、一般的にはEurophonのほうを好む人が多いのではないか、というご感想でした。私は、サウンドマニ アは、Feastrexを好み、音楽ファンは、Europhonのほうを好む傾向になるのではないかと思います。Mさんは、サウンドマニアではないと思い ます。さて、D5eをご自宅で鳴らされたらどう感じられるでしょうか。

Nf5Ex とMCAP-CR型のTR130b箱との組合せでは、ローエンドが素直に力強く伸び、パイプオルガンも実際の音に近く聞こえました。また、Mさんが持ってこられ た童謡のCDでは、女声が素直に再生されました。その他オーケストラ等を聴いても、低音と高音が混濁した歪感は全く無く、輪郭がはっきりした音でし た。Europhonも輪郭を鮮明に表現するスピーカーですが、Feastrexは、更に表現が明確になります。これほど明確な表現力は、他では聴いたこ とがありません。

M さんは、ご自分のシステム(ウェスタンのマルチウェイ励磁型)と比較すると、Nf5Ex+MCAPでは、低音がない部分では、全く低音が感じられないの に、低音のあ る部分では、低音が出てくると表現しておられました。ご自分のシステムでは、音楽ソースによらず常に低音感があるのだそうです。確かに、 Europhon もMさんのシステムと同様の傾向があるし、高級オーディオショーで聴く音は、ソースによらず常に重厚感があります が、 Feastrex+MCAPの音は、低音のない部分 では、全く重厚感はありません。一般的な高級オーディオとは全く違う音のようです。別な表現をすると、このシステムは、低音のノイズが少いということにな ります。一般的な高級オーディオとは別な次元にあるので、これは、好みの差と云わざるを得ませんが、忠実再生の観点からするとNf5Ex+ MCAP箱の勝ちでしょうか?

Mさんには、FostexのFE206Σ+FT96Hを使用したTR200aも聞いて頂きました。Mさん は、単独で聴けばこれはこれでいい音ですよ、ということでしたが、私にはNf5Exと比較すると、音の輪郭の表現の差と混濁感の差がはっきりと感じられま した。私は、今までこのような音しか聴いていなかったということです。とは云え、2本で百万円を超えるD9e TypeTに交換するというのはコストが掛かりすぎるので、改造はお預けです。

ちょっとがっかりな疲れた週末でしたが、来週が楽しみではあります。

追記

励 磁型ドライバーは発熱するので、断熱の条件にはなりません。また、各空気室での温度も異るので、等温の条件も適用できません。設計条件とは動作が異ってい るはずです。聴いた感じでは、誤差範囲に入りそうではありますが、今のところ解決方法を発見していませんので、今後の研究課題になります。


2008/12/26

ミューズの方舟2008の会場で頂いたご質問について

ちょっと前の話題になりますが、ミューズの方舟でご質問頂いた内容について記します。私の発表が丁度休憩の直前だったので、多くの方々とお話しすることが できました。私にとっても頂いたご質問は、頭の中を整理するきっかけになりました。

(1) バスレフ箱にダクトを複数付けても共振周波数は増えないのでは?

  普通のバスレフ箱にダクトを複数付けても共振周波数は増えません。私がPDF文書で記したような計算を当てはめてみると、振動の固有値が重解になることが 確かめられます。簡単には書けないのでいずれ詳しく書こうと思いますが、簡単に説明すると、ダクトを複数付けても、その両端の空気が直接繋がっているの で、共振周波数が増えないと考えれば良いと思います。
 では何故、MCAP-CR型の場合は共振周波数がダクトの数まで増やせるかというと、それは、ダ クトの両側のうち片側は、他のダクトの面と直接同じ空間に繋がってはおらず、別な空気室(空気バネ)を介して繋がっているので、条件が同じにならないから です。ここが並列に空気室を並べた構造の特徴です。このようにしないと、共振の固有値はダクトの数よりも必ず少くなります。

(2) ダクトが随分小さいですね?

  ダクトが大きいほうが低音が稼げると考えている方が多いのですが、これは必ずしも正しくありません。ダクトから発生する音圧は、ダクトの中の空気の塊が振 動するときの最高速度の2乗に比例します。これは風圧の計算と同じことです。しかし、風の力は、それにダクトの断面積を掛けた値になるので、低音を発生さ せる源は、空気速度の二乗と断面積の積に比例することになります。振動板の面積と振幅が同じ場合には、ダクトの空気速度は、共振点以外では、概ねダクト面 積に反比例することになります。これを総合して考えると、例えばダクトの断面積を1/2にすると、低音を発生させる源は、2倍に増えることになります。即 ち、振動板の振動を著しく妨げるか、或いは、ダクト壁面での摩擦損失が余程大きくならない限り、ダクトの断面積は小さくても良いことになります。
 MCAP 型の場合は、小部屋に分けているので、それぞれの部屋に合ったダクト面積を割当てることにより、お聞き頂いた通り、30Hz程度は楽々再生できるようにな ります。これもMCAP-CR型の特徴です。ダブルバスレフの場合、折角部屋を大きくしても、ダクトも大きくしてしまうと思ったほど低域が延びないということに なります。このことは、私が記したMCAPの計算方法に基いて簡単に計算できますので、興味のある方は是非ともお試しください。

  ミューズの方舟のイベントで私が明言しましたように、スピーカーの設計は物理学なので、タネも仕掛けもありません。MCAP-CR型の技術情報は全て公開してあ り、秘密も特殊なノウハウもありません。ですので、興味のある方は、ご質問頂ければ、時間の許す限りお答え致します。また、実際に設計してみようという方 がいらっしゃいましたら協力は惜しみません。

 皆様良いお年をお迎えください。

2008/12/23

Feastrex導入

本 日、FeastrexのNF5Exが届きました。ン十万円の買い物で、自分にとって、生涯で一番高価なオーディオ商品の買い物でした。
M さんに、TR130b型キャビネットをお譲りするので、先ずは自分のドライバーを取付けて、鳴らしてみました。お譲りする方のドライバーは、励磁型の TypeIIで、私のTypeIとは取付穴の形状が異るのですが、MさんのTypeIIに合わせた穴を開け、励磁電源用コネクタも取付けました。
朝8時半から作業を始めて、音が出せたのはようやく午後6時を回ったところでした。励磁型は初めてなので、配線が間違っていないか心配でしたが、あっさり と音が出ました。

アキュフェーズのP-350を使用し、鳴らし始めは、がさがさの音でしたが、10分、20分と経過するうちにがさがさ感が取れてきて、1時間もしたころに は、美音を奏で始めました。子供の合唱は天使の声、伴奏のオルガンは、まるで教会にいるかのように鳴り響き始めました。

Mさんのドライバーは、ン十万円の桁が上がりそうなもので、しかも、エージングが進んでいるので、悪い音がするわけがありません。鳴らし始めの音でこれ だったら、Mさんはきっと喜んで下さるに違いないと確信しました。


問題は、Tangbandの5インチのように4つ穴ではないので、PC用のファンガードが取り付かないことです。突っついて傷つけないよう注意しなければ なりません。こういう高価な商品には、質の良いグリルが付属すれば良いのに...
何はともあれ、これで、年明けにはMさんのドライバーと交換できます。ああくたびれた。

2008/12/21

アンプの交換

ミュー ズの方舟2008スピーカーコンテストも終了して、一段落ついたので、今度はアンプの交換を進めています。暫く使用していなかった、ユニエル電子のPA- 036というアンプを出してきて、ボリウムを付けました。これは、基板だけを販売していたもので、放熱板、筐体や電源は自分で何とかしなければならないも のです。アンプ基板の他に、ダイオードブリッジは、ユニエル電子で購入できたので、利用しました。
このアンプのパワーICは、ミニコンポ用のものだそうで、高級オーディオからはかけ離れたものですが、以下の工夫をすることにより、素晴らしくいい音にな ります。その工夫とは、江川三郎さんのパワードケーブルと同様の構成にすることです。パワードケーブルの特徴は、
(1)電源にACアダプタを使用する。
(2)電源とアンプの筐体を分ける。
(3)電源は左右別々にする。
の3点です。こうすることにより、定位が明確で、クリアな音になることは、以前に実験室にお邪魔したときに確認できました。
今回、また出してきたアンプは、なるべく同様にしています。
写真の中央下にある緑色の箱が、ACアダプタです。これは、プラスマイナス電源なので多少複雑ですが、ACアダプタに変わりはありません。アンプは、中央 左側、StuderのD730の下にあるメガネザルのような筐体にモノラルアンプ2台が収まっています。
D730 の出力から、このアンプに直接繋ぎ、入力ボリウムで、音量を調整するという、いたってシンプルな構成です。部品のコストの総額は、4、5万円程度だと思い ますが、自分の使い方ではこれで十分なパフォーマンスが出せます。普段使用しているアキュフェーズのP-350と比較すると、スペック上の出力は負けます が、クリアな音場、瞬間的な電流供給能力で差をつけます。欠点はケーブルの処理が大変なことですが、音は納得できるものです。
スピーカーは、もう十分楽しんだのでこれからは、アンプで楽しもうかと思います。

2008/12/15

ミューズの方舟2008

私にとっては、MCAP-CR型を初めて公開する場だったミューズの方舟2008スピーカーコンテストが、12/14に開かれました。
自分の結果としては、想像していたよりも高い評価を頂けたので、ちょっとびっくりしています。それは置いておいて、私の感想を書きます。


ま ず最初の2作品です。

EさんのAn Experiment IV(写真右側)
そのままでも売れそうな仕上げのお金がかかったシステムです。
FE138ES-Rを使用したドロンコーンシステムということでした。最初はダブルバスレフにするつもりだったのが、ダクトからの中高域が気になるという ことで、ドロンコーンに変更したということです。音はあまり印象には残りませんでした。ゴメンナサイ。

Hさんのエレファントノーズ(写真左側)
安いダイトーヴォイスのドライバー使用した曲がりダクトのバスレフシステムです。ドライバーは安いですが、とても上手に鳴らしていました。仕上げが綺麗 だったらもっといと思います。音楽を楽しむのにはいいバランスだと思います。
続 いて、K野さんの、violeena-fは、FE167Eを使用したバスレフシステムです。

意匠も素晴らしく、音も良い傑作です。音楽が鳴っていました。決して見掛け倒しではなく、音楽を楽しむのには十分なものです。

販売したら高く売れるだろうと思います。

次は、S藤さんのMy チューバです。

曲 面構成のバックロードホーン(ちょっと違うかも)で、これでいい音がしないはずがない、という力作でした。低音もたっぷり低いところまで出るだろうと思い ましたが、意外に低域は薄め、ローエンドも延びていませんでした。これは、キャビネットのせいではないと思います。FE138ES-Rは、低域を延ばしに くいドライバーなのでしょう。違うドライバーを使えば、量感たっぷりの素晴らしい音が出るはずです。

他の作品でもそうでしたが、FE138ES-Rは使いこなしが難しいようです。

続いて、ミューズの方舟会長、M田さんのチューバエウディです。

毎年作品を作り続け、しかも、常にハイレベルのM田さんの作品らしく、音のバランス、解像度、迫力共に十分です。

この作品が今回の音質賞でしたが、私の音質賞も、やはり、M田さんのチューバエウディでした。

後で、懇親会のときに、M田さんとお話しする機会がありましたが、毎回凄いプレッシャーだそうです。今回も相当のプレッシャーだったそうで、ご苦労が窺い 知れます。

毎年、盛り上げて頂いて有難う御座います。
続 いて、K辺さんの、PerfumeII(IIIか?)です。
今回の総合賞を受賞された作品です。

線の細い細やかな音作りで低音にはアクセントを付けています。

Fosterのドライバーは、私も購入しましたが未だ使ったことがありません。見るとびっくりするほどのチャチなドライバーをよくぞここまでと思います。

FE138ES-Rの1/20位の価格のドライバーですが、完全に食っていました。
続 いて拙作品のTR130bです。

自 分としては、良く鳴ったなあと思います。しかし、事前の確認時には、『春の祭典』の一発でダンパーが当たってしまい、本番では鳴らすのを止めました。時間 も足りないと思っていましたが、実際には十分な時間があったので、もう1曲ジャズでも鳴らせば良かったかな、とちょっと反省しています。

自分のアンプより良質な、力のあるアンプだったので、低音は思っていた以上に良く伸びました。32Hzの大太鼓、33Hzのオルガンは、自宅よりも雄大に 鳴っていました。

発表後に、ある方から、自分も作ってみたい、と云われたので、励みになりました。

また、自分が想像した以上に、良いと思って下さった方が多かったので、自分としては大成功と思います。
I 形さんのF08は、バックロードホーンだと思っていましたが、バスレフだということでした。

空間をたっぷりとったゆとりのある音で、音楽鑑賞向けの演出になっています。

センターキャップにスプレー糊を付けたという発想は、ユニークです。しかし、音が変わるのかな?

FE138ES-Rには、コイルを入れて高域を落としたということでした。フルレンジとは云いますが、やはり使いこなしの難しい、マニア向けのドライバー のようです。

K村さんの、サウンドゲートは、コストをかけないというコンセプトで、立派に作っています。ダイトーヴォイスのドライバーの高域が気になるということで、 抑えるための反射板を付けて、高域を散らしていますが、これは無いほうが良かったと思います。

K村さんは面白い方で、場が和みました。
S 須さんのスーパーMSは、アンサンブル型のスピーカー。

広い家に住んでいれば置きたい、超高級型です。現代美術館に展示するのにも良さそうです。

音のほうは、悪くは無かったですが、自分は普通のステレオスピーカーのほうが落ち着きます。

さて、結果は上記のようでした。全てTR130bに付けてくれた人が4人もいたのには、自分も驚きました。好みが合う人は意外に居るものですね。因みにこ れは、自分とか身内ではありません。
採点発表の経過を聞くと採点者の好みが分かれていることが良く分かりました。また、コメント欄も後で見せて頂きましたが、辛口のコメントは大変参考になり ました。

最後に、ミューズの方舟の皆様にお礼申し上げます。

2008/12/10

あてにならない自分の耳

ミューズの方舟に出品するTR130b型 を梱包してしまってからは、下記のように、TR200a型 を使用しています。リンクの部分にあるシステムの測定結果を比較すると、TR130b型のほうが低域までフラットで良さそうなのですが、TR200a型を 聴くと自分の測定結果とは全く違い、超低域まで相当な音圧を発生するように聞こえます。一体何が間違っているのか、首を捻ってしまいます。測定データはエ ンジニアリングに必要ですが、最後は自分の感性と好みなのでしょうか。感性や好みは他人には通用しないので、やはり測定結果が重要なのでしょうか。
その答えはミューズの方舟のイベントで見つかるかもしれません。今週末を楽しみにしています。

2008/12/07

名人アンプの修理-その 2

昨日、ミューズの方舟2008に出展するTR130b型を梱包してしまったので、しまってあったTR200a型をメインシステムに繋いで使用しています。 TR200a型は、作例に 記してあるものです。このシステムは、スピーカーユニットにFostexのFE206Σ+FT96Hを使用しており、今まで製作したMCAP-CR型システムの 中では最も高価で大型のものです。当該記載にあるように、製作・仕上ともMAKIZOUクラフトで実施したもので見事なプロの仕上になっています。音は当 然のことながら、フォステクスサウンドで、張りの良さ、しなやかさが両立したうえに、瞬発的な反応の良さを兼ね備えています。フォステクスを愛好して止ま ない人が多いことは、この音を聴いただけでも良く分ります。

今回は、新しい基準でデータを取り直し、結果は、英文ですが、作 品集に 追加しました。新しい基準で見ると、中高域はフォステクスのカタログデータとも違い見事にフラットな特性ですが、低域のレスポンスはだら下がりで、 36Hzでは中高域に比べて35dB位低くなっています。この特性からすると低域の再生限界は70Hzというところですが、聴感ではそのように感じられま せん。FFT分析の画面を見ながらいろいろなソースを聴いていたところ、ソースによっては20Hzでも反応しています。また、オルガンの最低域の再生も中 々のものです。先に書いたTR080aを聴いたときもそうなのですが、聴感と自分で測定した特性とは一致していません。このあたりが特性の難しいところな のでしょう。確かに、長岡先生の作例についても、先生自身の表現を読むと、特性の暴れているものに対して先生の喜びが感じられるものがたくさんあります。

TR200a の音は素晴らしく、特に伊藤喜多男さんのアンプで鳴らしたときの音は低域がぐっと延びて実に良いのですが、FE206Σの能率が高い(公称96.5dB) のため、残留ノイズが気になりだしました。残留ノイズは、電源を切って、平滑コンデンサの中の電荷によって鳴っている状態では聞こえなくなるので、電源周 りで 発生していることは間違いなさそうです。そこで、平滑コンデンサーを交換してみようと思い、中を開けて見たところ、平滑コンデンサーを外すのは自分の力量 では無理なことが分りました。そこで、前回、Kさんに見て頂いたときに、『これも怪しい』と指摘して頂いた別のコンデンサーを交換してみました。

交換後のキャパシタ


交換前のキャパシタ

電源の平滑コンデンサは、複雑に絡み合っており、外すことも、直接見ることもできませんでしたが、上記のコンデンサの交換程度であれば自分の技量でも何と かなりました。
早速音を聴いてみると、ノイズは残っていますが、幾らか小さくなりました。心なしか音も良くなったようです。AccuphaseのP-350も決して悪い わけではないのですが、このアンプと比較すると低音が軽薄に感じます。

MCAP 型は低音の再現能力が特徴なのですが、随分とアンプに左右されます。恐らく、フルレンジドライバーを使用した共鳴管型やバックロードホーン型もアンプに よって随分違うのだと思います。長岡先生が、アンプのテストには、必ずスワンを使われていたことは、正解のようです。

2008/12/06

ソースの変更

私 は自家用車を所有していないので、ミューズの方舟の会場までは、タクシーを利用しなければなりません。このため、1週間前のこの週末に、出品作を梱包する ことにしました。最後に予定するソースを聴いていたところ、予定していたバッハのオルガンでは、聴きどころになる前に時間切れになるような気がしてきまし た。このため、オルガンの曲目を、最初のうちから聴きどころが出てくるものに変更することにしました。
新しく選んだものは、"ORGANI STORICI DEL FRIUTI"(GB 5096)の18番目のトラックにある、Ronchis作曲のAdagioで、以下が、このソースのFFT分析画面です。

ロー エンドのピークは、33Hzで下のバッハとほぼ同じですが、30Hz以下のレベルは大きくありません。それでも最初から低音感が分りやすいので、こちらの ほうがいいと思います。こちらのオルガンは、下のHeidelbergのオルガンの音とは、随分違います。どちらかというとオンマイクに近いようで、風切 り音も聞こえます。オルガンの音色、録音の違いを聞くと面白いです。

全く関係ありませんが、最近は、伊藤喜多男さんのアンプを修理して聞 いていたりしたので、アンプの差に敏感になりました。オルガンについては、伊藤喜多男さんのアンプのほうが圧倒的に良く聞こえます。しかし、瞬発的な低音 だけは、AccuphaseのP-350のほうが僅かながら上回っています。この差は、電源の平滑コンデンサーの劣化度の差かもしれませんので、いずれ は、伊藤さんのアンプの平滑コンデンサーも新しくしようと思います。P-7100はどのような音なのでしょうか。P-350もそろそろ10年位になるの で、次のアンプを何にするか悩んでいます。長岡先生の仰るように、フルレンジシステムの音は、アンプの音だとつくづく感じます。

2008/11/30

ミューズの方舟2008 スピーカーコンテンストでの選曲

ミュー ズの方舟2008の開催日12月14日が迫ってきました。MCAP-CR型の初めての公開なので、皆さんどのように聞いて下さるのだろうか、ちょっとどきどきわ くわくといったところです。折角聞いて頂くのだから、何か印象をお持ち帰り頂かなければなりません。私は文学的表現が苦手なので、エンジニアらしく数字で 行きたいと思います。機材はともかくとして、数字の裏付けがなければ、なりません。そこで、数字の裏付けのある曲目を選択することにしました。

MCAP 型は、大型になり過ぎずにローエンドを伸ばせる方式なので、なるべくローエンドのはっきりした曲目を選ぼうと考えました。共通課題のマーラーは、 11/16に書いた通り、自分の買ってきたものが同じ品質のものかどうか怪しいのですが、同程度の仕上であるという前提で考えると、低音の再生能力は良く 分らないかもしれません。従って、もっとローエンドの低いソースを3点選びました。私の買ってきた同じ演奏のマーラー のCD(オリジナルのマスターテープは恐らく同じもの)では、50Hz以下はカットされたようにレベルが低いので、出品するTR130b型でも、3イ ンチのTR080a型で も大してスケール感が変わりません。むしろ3インチのほうが高域が美しいだけに良く聞こえてしまいます(下の11/16のスペアナをご参照ください)。

低音とは云っても、少くとも、瞬発的な低音と持続する低音に分けなければなりません。このため、太鼓型、オルガン型に分けて選択しました。

最初に太鼓型の瞬発的な低音のCDです。曲目として、2曲選び、音楽ソースをFFT分析に掛け、ピークホールドしたものを示します。
ど ちらもゲルギエフ指揮のキーロフオーケストラの演奏で、上のものは、有名な『春の祭典』のトラック3です。大太鼓の瞬発力が凄まじく、約36Hzの低音が 他の周波数よりも10dB位高いピークとして入っています。これ位の周波数帯の音が入っていないと、3インチのTR080a型でも大差ないか、むしろ TR080a型のほうが、良く聞こえてしまいます(TR080a型は不思議なことに測定上のローエンドよりも聴感上はローエンドがずっと低く聞こえま す)。

そ の下は、『The Gambler』(日本語題名不明)の2枚目のトラック7のもので、こちらは、大太鼓のチューニングを少し下げて、約32Hzがピークとなっています。こ の差が分らないシステムでは、どちらも騒がしいだけの音楽になってしまいます。ン十万円以上のスピーカーでも小型のものでは、絶対に出せない程度の差でし かありませんが、お聞かせするTR130b型では、この4Hzという差を明確に鳴らし分けることができます。私が使用しているパワーアンプP-350で は、低域の瞬発力が足りませんが、会場で使用するP-7100では、瞬発的な低音を十分に鳴らすことができると思います。下の記事(10/19)にある私 のシステムでのスペアナでは、『春の祭典』の36Hzのピークが低くなってしまっていますので、瞬発的な低音の再生能力は、この程度なのかもしれません が、会場では高性能のパワーアンプを使用するので、かなり豪快に鳴るだろうと思います。

『The Gambler』は、チェック用として有名かどうか知りませんが、『春の祭典』はチェック用CDとして持っているという方が多いと思いますので、比較も容 易なことでしょう。どちらも20Hz以下の低音まで入っている優秀録音です。



オ ルガン型の持続する低音用のソースには、ハイデルベルクにあるハイリガイスト教会のパイプオルガンで演奏された、バッハの"Komm, Gott, Schoepfer Geist" BWV667を使用します。上記と同様に、ソースをFFT分析してピークホールドしたものを下記に示します。


バッ ハの作曲ですが、意外なことに低音のピークは32Hzで、それ以下の24Hz、21Hzにもピークがあります。低音がたっぷり入ったCDですが、小型シス テムでは、電気オルガンと大差ないようにしか聞こえないと思います。私のTR130b型でも24Hz以下はレベルが低いと思いますが、32Hzは十分に 鳴らすことができます。

当日は持ち時間が10分しかなく、そのうち自由ソフトの紹介に割けるのは精々7分位と思いますので、多分この3曲で時間切れになると思いますが、他にも一 応予備として1枚持ってゆこうと思います。

私 のシステムは、上記のように特徴を明確にして紹介したいと思いますので、バックロード型や共鳴管型との違いをお楽しみください。スピーカーユニットが安物 で、ナイロンフレームが盛大に振動しますが、そのような欠点を補って余りある音だと思います。FE138ES-Rを使ったらどのような音がするのか楽しみ ではありますが、今回はW5-1611SAでお楽しみください。TR130b型についての詳しい記載はこ こにあり、当日配布される資料はここに あるので是非とも事前にご参照ください。

それでは会場でお会いしましょう。声をかけて頂ければ励みになります。

2008/11/28

MCAP-CR型の再評価

CBS 型キャビネットを 新たに考案し、どのように料理しようか、楽しみにしていました。CBS型は簡易計算方法が分かりませんので、方程式を行列形式にまとめ、特性方程式の固有 値を求める計算をしてみました。行列形式にまとめ、剛性行列を見たところ大変気になることがありました。それは、行列の形が美しくないことです。以下が、 CBS型の剛性行列です。

上側の3行3列はMCAP-CR型と同じ形をしていますが、他の部分では、対角状に並ばすずれていたり、縦横に並んでしまったり、どうも気になります。

実 際に、キャビネットのサイズを想定して計算してみましたが、どのダクトをどのような断面積とし、長さとするか、全く見当が付きません。すこしずつ変えてみ るものの、各固有値が離れてしまったり、実数解以外が多く出てしまったりして、どのような設計にして良いのか、試行錯誤の手前で止まってしまった感じで す。剛性行列は、対角行列なので、実数の固有値を持ちそうですが、質量行列の逆行列を掛けて固有値を計算するので、固有値が実数であることは保証されなく なるのです。この点はMCAP-CR型でも同じですが、MCAP-CR型では、実数の固有値が出るようダクトのサイズを推定することが可能でした。

MCAP 型は、方程式の形が対角状に綺麗に纏まっており、どのダクトをどのような断面積・長さにすれば共振周波数を思うように変えられるのか見当が付きました。 CBS型の場合は何故このようにならないのかというと、それは、空気室を並列に繋ぐダクトがあるためです。このダクトの存在が、パラメータを増やし、設計 を困難にしています。CBS型でも、シミュレーションのパターンを増やし、銃弾爆撃型に試行してゆけばベストな設計ができるかもしれませんが、実用的では ありません。

今後、CBS型に挑戦してゆけるのか、怪しくなってきました。

それにしても今回分かったことは、MCAP-CR型の実用的な優位性でした。先ずは、MCAP-CR型を完成させることが先のようです。

2008/11/27

測定方法の発展

私が実施してきた測 定の方法については、問題が多いと書いていました。しかし、リニアスィープ信号を導入して以来、納得のゆく結果を得ることができましたので、測定方法、表 示方法 を統一することにしました。これに伴い、以前の方法で計測した結果は、随時削除してゆきます。最終的にまとめた測定方法は、英文でPDFの形に纏めまし た。詳細は、MCAPAP000Eと いう文書に記しましたのでそちらをご参照ください。

以 前の方法との違いは、基本的にはオーディオテクニカのCDのスィープ信号から、フリーウェアのWaveGeneで作成したリニアスィープ信号に変更したこ と、および、これに伴って評価する周波数レンジを低音側と高音側に分けたことです。一続きの信号を使用すると、低音側ではサンプリングする時間が相対的に 不足 するので、低音側は遅めに、高音側は早めにスイープするようにしました。そして見掛けのレベルが一致するよう、FFTのサンプリング時間を、高音側では短 め、低音側では長めにとっています。こうすることで、随分と細かく観察できるようになりました。また、ログスィープでは、高音側が速くなりすぎてしまうの に対し、リニアスィープでは等速でスィープするため、高音側での歪も確認できるようになりました。オーディオテクニカのCDに入っていたスイープ信号はロ グスイープであることも分りました。

測定方法を纏めているうちに、別な発見 もありました。今迄は、実際に再生されている音をFFT分析するだけでしたが、CDの信号をリッピングしてFFT分析する知恵を付けたので、CDに記録さ れている音のスペクトルは確認できるようになりました。CDの信号のスペクトルと再生音のスペクトルを比較することで、システムの弱点が明確に現れるよう になりました。瞬発的な低音の再生能力は、アンプの電流供給能力によってもかなり左右されますので、この比較では、スピーカーだけでなく、アンプも同時に 試されていることになります。瞬発的な低音の再生能力は、長岡先生が書かれている通り、定常特性では現されないものです。このような比較をしてみると、実 際の低音感と定常特性との間に差があることも分ります。

相 変わらず問題なのは、部屋の特性が大きく影響を与えてしまう点で、部屋の問題と思われるディップが常に結果に現れてしまいます。アプリケーションレポート にある特性の大きなディップは部屋の影響と考えてほぼ間違いありません。部屋の影響を分離するのは今後の課題となります。できれば、方舟のような大きな部 屋が欲しいところですが、残念ながら、アマチュアにはとても無理な話です。

しかしながら、創意工夫を重ね、こうした試行錯誤による発見は、追々更新してゆこうと思います。資金がない分は知恵を絞って考えるしかありません。



2008/11/26

MCAP初期モデルの TR080a型


MCAP初期モデル TR080a型
K さんが来られた週末、クリスマスの飾りをするときに、テレビの周りを掃除したついでに、初期モデルのTR080a型を下記の名人アンプで鳴らしてみまし た。このモデルは、製作後、初めて音を鳴らしたときには、思わず声を詰まらせるほどの音だったものです。しかし、その後、テレビの音声用に使用するに留 まっていました。
何故かと云うと、サイズが丁度良かったためと、最初に測ったデータがいまひとつだったためです。
改めて聴いてみると、あ まりの良さに考え込んでしまいました。計測装置を引っ張り出して、スィープ信号をFFT解析してみてもあまりフラットではありません。それに60Hz以下 はレベルが低くなっています。ところが、オルガンを聴いてみても低音は良く出ているし、オーケストラもしっかり鳴らします。Tangbandの3インチ低 価格モデルのW3-316Aを使用したもので、キャビネットが4部屋構造のMCAPであること以外は特徴があるわけではありません。それに、板厚も9mm しかありません。それがどうしてこんなに好ましい音がするのでしょうか。全く分りません。
ミューズの方舟に出品するTR130bと比較すると、低域は負けますが、高域のキレの良さでははるかに上回っています。ブラインドで聴いたらこれほど小さ なサイズであることはだれも分らないと思います。
ということで、製作例にこのモデルの情報を 追加しました。英語だけですが、暇がありましたらお読みください。
スピーカーシステムの評価は難しいものだ、と改めて感じてしまいました。

2008/11/23

名人アンプの修理

昨日、リンクにも紹介している無職人生 (オーディオ、自作、酒、料理、安曇野)のKさんが尋ねてきて下さいました。オーディオ愛好の方が自宅に尋ねて来られたのはこれが初 めてです。私の装置の音を聴いていただきました。

最 初に、居間にある、サブシステム(?)を聴いていただきました。サブシステムとは云っても、実際は譲り受けたビンテージ物ばかりで、SIEMENSの EUROPONE、STUDERのD730、CRESCENTのRA1501-Aという組合せのもので、今となっては入手も困難なものが中心のシステムで す。このシステムで、教会録音もの、モーツァルトのピアノ等を聴いてみました。普段は、殆ど使用していないシステムを久しぶりにきいたところこれがなかな かの音でした。Kさんも興味深く聞いておられました。

その後、MCAPの音を聴きました。アンプには、伝説の伊藤喜多男さんが本人の手で 製作した8900型という真空管アンプを使用して聞きました。このアンプは既に30年ほど経過しており、ここ10年位は殆ど使用していなかったもので、使 用しているうちにノイズが出るという問題がありました。Kさんが来られるので、ここ1週間位使用していましたがコンディションは万全ではありませんでし た。それでも、MCAP-CR型の特徴はそれなりに感じて頂けたようでした。オルガン、オーケストラ、レクイエムなどを聴きましたが、ミューズの方舟に出品する TR130b型は、低音の出方に対して、高域がもう少し弱いかなと言っておられました。また、その他に、QU080b型、TR130a型(どれも別のとこ ろで詳しく紹介しているものです)を聴いていただきましたが、QU080b型のほうがバランスが良いと感じられたようです。

ア ンプの調子が良くないことは分っていたので、通常使用しているAccuphaseのP-350に切り替えて聞いたところ、低域は薄いが、高域はこちらのほ うが良いとのことでした。8900は、自分で聴いていても、高域は荒れており、低域の量感はありものの瞬発力が不足していました。

さ て、Kさんは、アンプの専門家ですので、8900型を見て頂いたところ、3つのコンデンサが怪しい、ということを指摘頂き、修理方法を指導して頂きまし た。その後、ご帰宅のときに、パーツ屋さんまでお付き合い頂き、パーツを購入しましたので、今日ご指導頂いた通りに修理してみました。名人の作品に手を入 れることに抵抗はあったのですが、これは工業製品だから、と割り切って実際に修理してみました。


Kさんが怪しいと指摘されたコンデンサーは左の写真の3つのコンデンサーです。

特に怪しいのは左の2つなので、先ずは、これらを先に交換し、駄目なら右の青いものも交換してみると良いというアドバイスを頂きました。

さて、良く見ると、どちらも上に抵抗があり、また、狭いところなので、このような作業に慣れていない自分には不安があります。

Kさんは、回路が同じく繋がっていれば良く、やりやすいように繋げれば、ということでしたので、暫く眺めていましたが、良い方法が思いつきません。

結局、元の形にいちばん近い形で接続することにしてやってみました。

何と、意外なことに、やはり同じように繋ぐのが最も作業性が良いのでした。流石に名人、修理のことも考えて作ってあるんだ、と妙に感心してしまいました。


実際に作業してみると意外に簡単に出来ました。

名人と同じとは行きませんが、とりあえず、コンデンサーはちゃんと付いています。コンデンサの容量は当然100μFと耐圧は、元も25Vから50Vに変更 になっています。

左右1台ずつコンデンサーを交換し、修理は完了となりました。



外見は全く変わりませんが、内部は左のように変わっています。
真空管アンプは素人でも教われば修理ができるのですね。

修理を終えて、音を出してみると、今迄より格段に良くなっています。高域も荒れていないし、低域の量感や瞬発力も十分です。今迄、2時間くらいの使用で症 状が出ていたので、今回はCD2枚分以上を聞きましたが、症状は全く出ていません。これで、いい音が楽しめます。

Kさん、どうも有難う御座いました。是非またいらしてください。今度はもっといい音で鳴らします。

2008/11/16

共通ソフト

ミュー ズの方舟2008の共通ソフトが入手できなかったと書いておきながら、今日ふと思い立ってヨドバシアキバにあるタワーレコードに立寄ってみると、一応、共 通ソフトの中で決定済みのワルター指揮マーラーの交響曲第一番が売っていました。どんな音がするのか興味があったので購入してきました。
早速聴いてみると、高域は良く伸びています(ひょっとしたら高調波歪かもしれませんが)が、低域はあまり伸びていません。イマイチの音でした。
ソー スをFFT解析してみると、低域のピークは50Hz程度で、40Hzになると更に20dB位低くなっていました(下図)。30Hz以下も一応は入っていま すが、レベルは30dB程低くなっています(スピーカーからの再生音ではなく、ソースの音です)。
聴いて感じた通りだったので、こんなもの かと思いましたが、しかし、これが本当の音なのか疑問に思いました。というのは、かつてCDの出始めの頃に、宣伝に釣られてCBSソニーのCDを購入した ときに、音の悪さにがっかりしたことがあるからです。LPとは違って低域がカットされていて、全体的に死んだ音になっていたのです。恐らくラジカセとか低 級コンポ用に低域をカットしてあったのではないかと思います。そのときは、CDは本当は音が悪いのかと散々悩みました。しかし、その後、Odysseyの 輸入版を聴い たら、LPと殆ど同じような音になって蘇っていたので、CDは音が悪い、という疑問は解消されました。
そこで、購入したCDと参加要綱に記載され たCDの番号を比べてみると確かに違っていました。私が購入したCDは、"SICC 404"、参加要綱に記載されたCDは、"SRCR 9970"となっています。同じ音がするのかどうかは分りません。私が購入したものは、CDの製造過程で、ミニコンポに合わせて低域はカットされたのかも しれません。スペアナの形を見ると、50Hz以下のレベル低下が不自然で、カットされたように見えます。また、中域もレベルが高くなくドンシャリ型にフィ ルターをかけたようにも見えます。本当は素晴らしい優秀録音なのではないかと思います。

マーラー交響曲第1番ニ長調 ワルター指揮コロンビア 交響楽団 第4楽章冒頭から2分程のスペアナ
(Sony Classics SICC 404をwavファイルに変換してFFT解析したもの)

共通ソフトが決った過程は分りませんので、上記のCDが同じ音だと仮定すると(多分私が購入したものは、低級コンポやヘッドホンステレオ用と思います が)、下記のような基準があったのかもしれません(違っていたらゴメンナサイ)。
(1) どのような作品が出てくるか分らないので、低域は適当にカットされたものにする。超低域がハイレベルで入っていると、歪んだ音を聴き続けることになるかも しれないし、下手すると13cmドライバーを壊すかもしれない。
(2) 粗捜し大会ではないので、再生しやすいソフトのほうが良い。
(3) 高域は多少ハイレベルでもドライバーが壊れることはないので大丈夫。

低域の再生能力だけで良し悪しが決るわけではありませんから、当然のことだと思います。低域の再現性を示したければ、自由ソフトを使えば好いわけですか ら。

2008/11/15

聞くことが最高のチュー ニング?

ミューズの方舟2008スピーカーコンテストの期日が迫ってきました。他に参加される皆さんはどのような状況でしょうか。

私といえば、9月に完成させてから、特に何の調整もなく聞いているだけです。したことといえば、正弦波やスィープを聞いて、特性を評価したことくらいで しょうか。あまり音を良くするという調整は得意ではないのです。
吸音材も最初から変わらず、パッキング用のスポンジが少量入っているだけです。発表当日の資料も提出してしまっています。

し かし、聞くということは、最高のチューニングなのかもしれません。箱も組立完了から既に2ヶ月以上経過しているのでエージングも進んできていると思いま す。音も慣れてきたせいか段々良くなってきたように思います。完成当初は、爆発的な低音は良かったのですが、中高域にやや粗さが感じられました。しかし、 今はだんだん滑らかになり、細かい音が出るようになってきました。室内楽はもとより、オペラもオーケストラもピアノもオルガンも合唱も、そして、ジャズト リオも雰囲気が良くなってきました。自分の子供のようなものなので親馬鹿ではありますが、相当の高級機と比較できるレベルになってきていると思います。

当 日使用するソフトは、次々にいいものが見つかるのでなかなか決りません。共通ソフトも購入しようと思いましたが、石丸電気のソフト館になかったので、聞く こともできていません。これはぶっつけ本番になりそうです。同じ曲目のマーラーは、別なものがあったので聞きましたが、なかなか悪くないので、ワルターの ものも大丈夫だと思います。因みに、マーラーは好みではないので、できたらショスタコービッチやニールセンなら良かったと思ったりしています。

ミュー ズの方舟の話題は、安曇野のほうで盛り上がってしまいました。リンクで紹介している大山さんのメルマガの中でもイベントのことは紹介されていることもある し、今回は入場者の方がかなり多そうな予感がします。常連の出場者の方々の完成度は恐ろしく高いので心配はないのですが、私も来て頂く方にがっかりさせな いよう、頑張らなければなりません。

2008/11/09

HX132

Omnes AudioのL5
リンクで紹介している麻布オーディオで、Ciareという イタリアメーカーのスピーカーユニットを取扱い始めました。このうち、HX132というフルレン ジは13cm口径で、ミューズの方舟2008スピーカーコンテストへの出品作に使用する候補のひとつでした。これもリンクで紹介しているドイツの SpectrumAudioに買いたいと申し入れたところ、在庫切れなので、代わりにOmnes AudioのL5はどうか、と云われ、L5を購入しました。L5はHX132のコピーだということでしたが、スペックを見ると結構違います。HX132の ほうが能率が高く、軽やかな音を奏でそうです。L5はドイツ 製ですが、HXはイタリア製ということで、国柄による音色の違いもあるかもしれません。L5と同時に購入したイタリア製のCantare 5FRUは、L5とは全く違う軽やかな音を聞かせていました。イタリア製の5FRUはパガニーニ、ドイツ製のL5はブラームス、そのように感じさせ る違いがありました。欲しいなあとは思いますが、Feastrexを買うために節約しなければなりません。我慢、我慢。
左の写真が、Omnes AudioのL5です。コピーとは云え、麻布オーディオのページにあるHX132とよく似ていますね。カタログの写真はあまり似ていないのに。
価格はL5のほうが少し安めです。



2008/11/08
Feastrexの使用を検討中

下 記の『安曇野の響き』で聞くことの出来たFeastrexのドライバーを使用することを検討中です。家の中にスピーカーの置き場が無くなってきたので、一 部を処分してからの導入となります。どうやって処分するかは検討中ですが、先ずは、ミューズの方舟で公開した後に、決めようと思います。
Feastrex のドライバーは、価格的にはハイエンド商品に入るもので、一番安い5インチアルニコ型D5nfでも、FE138ES-Rのおよそ4倍の値段です。普通だっ たら手を出しませんが、音はさすがにハイエンドと思わせるものがあります。MCAP-CR型の5部屋構造のキャビネットで使用したいと思っています。最新作の TR130bが良く出来ているので、同等の箱でも良いのかもしれませんが、D5nfは、マグネット部分が大きいのでTR130b型の箱では少々窮屈です。 次はトールボーイ型になりそうです。
それと同時にCBS型も試作に入りたいと考えています。3インチから始めるか、TR130bで使用しなかったOmnes AudioのL5型で始めるか思索中です。ある程度振動板面積がないと効果が分りにくいためです。

曲目選び(その2)

今 日、ふらりと石丸電気のレコードセンターに寄ってみました。売れ残りの在庫が、円高還元セールと称して1枚500円で売っていました。こういうものは、買 わなきゃ損とばかりに適当にショッピングカートに入れてレジに行ったら丁度20枚で合計10,000円でした。選んだ基準は、マイナーで、録音の新しいも の、また、できれば作曲が20世紀以降の新しいものです。オルガン等は、作曲年代が新しそうであればすぐに選びました。
今回はいいものが見付かりました。ひょっとしたらミューズの方舟で使用するかもしれませんので、ひとつご紹介します。

Drama spirituale in un atto e tre quardi, CD7336, Nuova Era
トリノの教会での録音、テノール、ソプラノ、バリトンとオルガンの競演。現代音楽らしく、曲そのものはとっつきにくいのですが、背景のオルガンが凄まじい 低音を奏でています。コンパクトスピーカーで再生しても何だか理解できないと思います。

こうやって買い続けているとときどきはいいものが見付かります。

2008/11/02
安曇野の響き
11/1 は、安曇野の響きというイベントを訪問しました。安曇野の響きは、無 職人生(オーディオ、自作、酒、料理、安曇野)の主催者の方が開かれたイベントで、ご自身のアンプと超高級品であるFeastrexの15インチスピーカー の組合せを聞くことのできるイベントでした。
写真左側は、標準箱、中央が和音さんのMDBR箱、 右側がユーザーの方の開発中の箱という三様の箱で聞くことができました。
会場は、響きが強く、話もし辛い状態でしたので、なるべく直接音を聴くように心掛けました。それでも実力の半分も出し切っていなかったと思います。もっと 状態の良い部屋で聞けば実力を出し切ったはずです。
特に注目して聞いたのが、MDBRは、ミューズの方舟2008に出品されるものと同型となると思われる箱で、TR130bよりも一回り小さなものです。
こ のMDBR箱は、アフリカ産のブビンガという木材を使用して製作された美しい箱で、全体的にも良い響きを出していました。ドライバーの良さも手伝って、音 楽を楽しむのに好適な、自然な音を出していました。低音の出方を確認するために、自分がチェック用に使用している再生の難しいCDをコピーして編集したも のを持っていきましたが、残念ながら低音の出方はあまり良く分りませんでした。セッティングが少し弱いこと、ケーブルの接続状態がいまひとつであること、 部屋が広過ぎること等のマイナス要因があり、実力を出し切っていないようでした。個人的には、もう少し大きな箱にしたほうが、窮屈にならずに聞けると思い ます。これと同じものではありませんが、MDBRは、ミューズの方舟では、ベストの状態で聞けるだろうと思います。

標準箱は、容積が大き めの単一箱に、四角い穴を開けただけのバスレフ箱ですが、容積にゆとりがあるだけあって、普通の音楽を楽しむには十分な低音を出していました。音楽的には これがベストかなと思いました。容積のゆとりは、やはり必要だと思います。容積が小さいと、余分な音が付いてしまいますが、これだけゆとりがあると付帯音 が殆ど感じられず、ドライバーの実力を発揮することができます。
開発中の箱は、背面の音を消す工夫がしてあるということで、バスレフとは違う考え方ですが、背面に穴があり、バスレフの動作もしていると思います。このド ライバーだけは、励磁型ではなく、固定のアルニコマグネットを使用したものでした。

Feastrex のドライバーは、超強力型で使いこなしが大変なものかと思っていましたが、Fostexの限定品とは全く異る質感で、いろいろな箱で楽しめそうです。いず れはMCAP-CR型と組み合わせたいと思います。しかし、現在狭い我家に試作品がぎゅう詰め状態なので、自分なりに十分に完成度が高まったと実感して、試作品 を処分するまではお預けです。

いろいろな方々とお話しができ、大変参考になりました。どうも有難う御座いました。

2008/10/26
測定の秋

夏の間は測定に力が入りませんでしたが、最近ようやく測定ができるようになりました。
夏 は暑いため、エアコンが必需品です。しかし、エアコンは測定に対して大きなノイズになります。特に、エアコンの風がマイクロフォンに直接当たると低域のノ イズが大きく出ます。暑さを我慢するのには限界があるし、窓を開けると外の音が入ってくるし、ということで、暑い間は測定が全くできませんでした。

ま た、10/18に記したようにリニアスィープ信号の作成方法を発見してからは、部屋の癖は別として、それなりに納得のいく測定ができるようになりましたの で、今は、自分の測定の方法の標準書を作成しているところです。やはり、『測 定について』に記した内容不明のスィープ信号では特性が分らないことが確認で きました。

さて、WaveGeneで作成したリニアスィープ信号を使用して、TR100a型の軸上1m の特性を測ってみました。ドライバーは、Tangband製10cmフルレンジのW4-927SCです。

先ずは、20Hz-400Hzについて示します。


次に、、右側のスペアナです。



右 側は、壁に近いこともあり、反射の影響を強く受けているようで、特性が異っています。左側では、100Hz付近にディップがあるのに対し、右側ではディッ プの位置が150Hz付近になっています。また、右側では、70Hz前後にピークがありますが、左側にはそのようなピークがありません。このように見てみ ると改めて部屋の重要性を再確認せざるを得ません。このようにスピーカーシステムの特性を測るときには、部屋の特性を合成してしまっているので、結局は良 く分らないものです。これは、無響室を持たないアマチュアの宿命でもあります。

次に、高域側のスペアナを示します。高域側は、部屋の特性の影響を受けにくく、測定でも左右で大きな差が無かったので、右側のみ示します。



驚 いたのは、高域のスペアナの形が、TangbandのW4-927SDに非常に似ていたことです。使用したドライバーは、W4-927SCですが、CとD との差は基本的にはロットの差であり、Cはダイキャストフレームであるのに対し、写真で見るとDはプレスフレームのようです。ところが、高域のレスポンス は、Tangbandのものと非常に似ているのです。流石に業務用のマイクロホンは、差が少ないのでしょうか。低域については、箱の癖、部屋の癖の影響を 受け、いびつですが、それにしても、W4-927SCの特性は見事にフラットです。ハイエンドも18kHzというスペックになっていますが、公称 20kHzとしても良さそうです。

雑誌でもウェブでも、20Hzまでフラットという目が点になるほどの良い特性を見かけますが、それには測定上の落とし穴があります。そのことは別途書こう と思います。


2008/10/19
曲目選び

ミューズの方舟2008スピーカーコンテストでお聞かせするためのソフトを何にするかは、難しい問題です。
今迄、いろいろと候補を考えていましたがなかなか結論が出ません。ソフトの選択の方針は、下記の通り決めています。
  1. MCAP-CR型の特徴を表現しやすいこと
    1. 低音域の瞬発力が表現しやすいのはドラム。
    2. 低音域の限界を表現しやすいのは、オルガン。
    3. 中高域から低音域までの繋がりを表現しやすいのはフルオーケストラ。
  2. 音が良いこと
    1. 13cmを使用しているので音場感が良いのは当然だが、MCAP-CR型である必要はない。
    2. 歪感が少いこと。室内楽の再生は楽だが面白みに欠けるが...
    3. オーディオショーで使用しているソフトに似ていること。やはりジャズか...
これらの条件で考えると、最低3曲、できれば4曲位は紹介したいと思います。ということで、既に絞っているものを、FFTの画面を見ながら考えていまし た。

候補のソフトをを含めてTR130b型の再生音のスペアナ画面をとってみました。赤い線がピークホールド値で、緑の線は、暗騒音です。暗騒音のピークはパ ソコンの音だと思います。我家は都心にありますが、暗騒音は十分に低いようです。

まず、音が良いという評判の、ゲルギエフ指揮の『春の祭典』(PHILIPS 468 035-2)のトラック3のスペアナ画面です。直接ではなく、再生音のスペアナです。


ゲルギエフ指揮キーロフオーケストラ 『春 の祭典』トラック#3

次に、同じ部分を、シモノフ指揮ロイヤルフィルの演奏(First Music Co.,Ltd. FRP-1060)を再生したときのスペアナ画面です。


シモノフ指揮ロイヤルフィル『春の祭典』ト ラック#3

シ モノフのほうは、大太鼓の周波数は31Hz位のチューニングですが、ゲルギエフのほうは、37Hz位のチューニングです。しかし、ゲルギエフ版のほうが圧 倒的に低音がたっぷり、大迫力に聞こえます。全体的には、録音の質はそんなに大きく違わないように思えますが、低音の入り方で随分と違って聞こえます。ゲ ルギエフ版のほうが、再生しやすいように思いますが、20Hzまでフラットに再生できるシステムだったらどちらが良く聞こえるのか分りません。

他 にも色々と聞いてみましたが、聴感とスペアナ画面は意外に一致しないようです。オルガンの低音等は、40Hz前後がハイレベルで入っているもののほうが、 30Hz付近が少し低めのレベルで入っているものよりも、最低域が低いように聞こえます。楽音になると、サイン波とは随分違って聞こえるようです。

まだまだソフト選びは始まったところで、これが最終決定のソフトではありませんが、本番の1ヶ月前には決めてしまいたいと思います。

TR130b型は、未だチューニングはしていませんが、確実に良くなってきています。エージングが少しずつ進んでいるようです。


2008/10/18
リニアスィープ導入

今迄は、オーディオテクニカのCDにある内容不明のスィープ信号を測 定もどきに使用してきました。
最 近、フリーウェアのWaveGeneを用いてリニアスィープ信号を作成する方法が分ったので、念願だったリニアスィープ信号をを作成し、CDにコピーして 測定してみました。相変わらず、いい加減な測定もどきであることには変わりありませんが、FFT Waveというシェアウェアには適合した信号であるので、使用してTR130bを 測定してみました。ドライバーには、TangbandのW5-1611SAを使用しています。これは、ミューズの方舟2008自作スピーカーコンテストに 出品する予定のスピーカーシステムです。

リ ニアスィープにするとスィープ速度が低域から高域まで同じ速さなので、20Hzから20kHzまで同じ条件になるようにスィープすると1時間くらいかかり そうです。このため、低域側は10Hz-400Hzを120秒でスィープ、高域側は、100Hz-20kHzを120秒でスィープというように分けまし た。そこから、条件がほぼ等しくなる帯域を切り出して表示しています。

まず、最初に、低域側の特性です。20Hz-300Hzまでを横軸リニアスケールで表示しています。

低域側のレスポンス(20Hz-300Hz)

40Hz 以下は下がっているように見えますが、聴感上はかなり強烈に出ています。20Hzでも暗騒音よりは20dB位は高い音圧が出ており、30Hzは聴感上は相 当な音圧で再生しています。40Hzでは、家中の壁が振動してビリビリしました。40Hz以上は、狙い通りのほぼフラットな特性と云えると思います。とこ ろどころディップがありますが、マイクロフォンを少しずらすと無くなったりするものなので、部屋の特性なのだと思います。このようなディップは、ピンクノ イズを使用した1/3オクターブバンド表示では判別できない場合があります。

次 に、300Hz-20kHzの特性を示します。低域側とは違ってレンジが広く、スペクトル表示では見難いので、1/12オクターブバンドの棒グラフ表示と しています。また、横軸は、見やすいように対数スケールにしています。これでも、長岡先生の1/3オクターブバンド表示よりはずっと細かく見ることができ ます。

中域-高域のレスポンス(300Hz- 20,000Hz)

310Hz -320Hz位にディップがありますが、これも部屋の特性だと思います。こうしたディップを差し引いて考えると、低域側と合わせて、40Hz-18kHz はほぼフラット、20Hzでもレスポンスがあるシステムということになります。特性上は、恐ろしくフラットで、文句なしと云って良いと思います。

今後は、このリニアスィープを使用した測定方法を確立して標準化してゆきたいと思います。


2008/10/13
インターナショナルオーディオショーとハイエンドオー ディオショーを聞いて

先週末は、インターナショナルオー ディオショー、今週末は、ハイエンドショーに立寄りました。
イ ンターナショナルオーディオショーは、高級オーディオショーで、数百万円以上するオーディオコンポーネントが所狭しと展示されていました。立寄ったのは、 10月11日(土)でしたが、大勢の人手で、ゆっくりと聞くことはできませんでした。場所は、有楽町の国際フォーラムで、各室に1社ずつ入って展示と試聴 をの場を提供していました。
おおむね駆け足で一通り見て聞いてきました。
最初に訪れたブースでは、隣のブースの音が良く聞こえてきました。1室を仕切って交互に聞かせていたようで、試聴できるブースは満員だったので入れず、こ ちらに入りました。洩れてきた音は国内メーカーの展示室の音で、正に、高級オーディオ装置の音でした。
こ こで思ったのは、『高級オーディオ装置の音とは何だろう?』ということでした。高級オーディオ装置の音は聴くとすぐにそれと分る場合があります。重厚感が あり、高域には艶があり、しっとりとしたオーケストラを奏でます。こういう音は、直接聴かなくても、洩れてきた音であっても、または、テレビの音声で再生 されたオーディオ装置の音でも分ります。
しかし、こういう音は、生の音とはまるで違います。生の音は、鋭く、激しく、ときには歪っぽく突き刺さる ように感じさせる場合があります。しかし、このような高級オーディオの音は、きつさ、激しさ、歪っぽさが一切ありません。高級なことは分りますが、一体何 なんでしょうか?生々しさを求めるのであれば、自分の装置のほうがずっと生に近い音です。自分の装置の音はこのようにオーディオっぽくはありません。そう いえば、長岡先生もそのようなことを書いておられました。自分の音は、長岡サウンドの系列なのかもしれません。

インターンナショナルオーディオショーでは、高級機の音を一通り聴きました。
自作では、とてもこういう音は鳴らせない、と感じさせたのは、Avangardeのホーンシステムでした。中域から高域にかけてのキレの良さはとても真似 できない。しかし...あの低域は許せませんでした。中高域の質に全く合っていません。表現が難しい音です。

中々良かったのが、SONICSの音です。数百万円よりはちょっと安めで、大音響ではありませんでしたが、心地良い音を響かせていました。自分の好みを座 標軸にすると、価格との整合性がまるでありません。自分はエコノミックな耳を持っているようです。


今週末は、ハイエンド ショーに立寄りました。こちらは、同じく有楽町の交通会館の一角で小ぢんまりとした展示でした。ハイエンドだけではなく、いろいろと ありそれなりに楽しめました。インターナショナルオーディオショーと出展が重なっていたメーカーはあまりありませんでした。


目 的にしていたのは、六本木工学研究所のコーナーでした。こちらは、ハイエンドというよりは、ローエンドに近い価格帯のものを聞かせる展示でした。ペアで 20万円以下のスピーカーシステムと、数千円のパワーアンプ基板の組合せで聞かせるものです。スピーカーは全て小型で、ローエンドは精々80Hz位 かな、という感じでしたが、フルオーケストラでなければ、十分聞けるシステムです。ハイエンドと比べてもさほど聞き劣りする訳ではありません。

興味深かっ たのは、アンプ基板です。電源と筐体は別に準備しなければなりませんが、価格が安い割には質の良い音でした。このような方式のアンプ基板の販売は、ユ ニエル電子と いうところでも行っており、私も、試したことがあります。こういう安い基板でも、電源を左右別々に準備すると、中高級品以上にクリアな音が聴けました。残 念ながら、高品位のパーツが入手できなくなったようで、今は歪率の値が一桁上がってしまっていました。今度は、六本木工学研究所で同様な高品質基板を出す というので、そのうち購入しようと思います。これはちょっと楽しみです。未だ、麻布オーディオのページには、このアンプのことが出ていませんでした。

このアンプ、早く販売を開始して欲しいものです。出来たら電源も別に販売して貰えれば、組合せでいろいろ楽しめます。

六本木工学研究所のスピーカー システム
展示品の中では最高級品(それ でも20万位)

六本木工学研究所のデモ用システム
(右側上は数千円のステレオアンプ、左側は少し高価なモノラルアンプ:共に電源は別に準備が必要)


比 較的良かったのは、QuadralのTITANというスピーカーシステムでした。デザインは今ひとつですが、鳴りっぷりは中々のものでした。しかし、これ も高音圧での低域はいまひとつ気に入りませんでした。低域の再生は難しいのですね。

段ボール箱等が雑然と並べられているのが気になります。

二 つのオーディオショーを聞いて最も強く感じたことは、本当のハイエンドに近付くには、自作スピーカーが良いのではないかということです。ハイエンド装置の 場合は、ちょっとしたホールのような場所でも壊れずに鳴らせなければなりませんが、普通の家庭ではそこまでする必要はありません。だから普通の家庭では、 フルレンジドライバーを使用したシステムが最も効率良く再生できる装置なのだと思います。自分の使わない部分の性能を犠牲にして必要なところを贅沢にす る、自作とは、このようなワンポイントの贅沢で成り立つシステムです。一般性はありませんが、趣味なのですから、それで良いのではないでしょうか。


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